AIマッチングで門真の製造業活性化、いずれは全国展開も視野:製造ITニュース
NTTコミュニケーションズは2022年9月20日、大阪府門真市の中小製造業が運営する門真プラットフォーム推進協議会(KPF)、門真市と提携し、AI(人工知能)を活用した受発注取引のマッチングシステムの提供を同年11月1日から開始すると発表した。
NTTコミュニケーションズは2022年9月20日、大阪府門真市の中小製造業が運営する門真プラットフォーム推進協議会(KPF)、門真市と提携し、AI(人工知能)を活用した受発注取引システム「KPF受発注システム」の提供を同年11月1日に開始すると発表した。運営を担うKPFでは、2022年度中にシステムへの300社以上の登録と受注総額1億円を目指す。
AIで受発注を簡潔に、手続きはオンラインで完結
システムに受注企業として登録できるのは、門真市および周辺で製造業を営む中小企業となっており、月額5000円の利用料と成果報酬として受注金額の5%をKPFに支払う。発注企業としては日本全国の企業が登録可能で利用料は無料だ。正式な提供開始は2022年11月1日だが、キャンペーンとして同年9月20日から10月31日まで受注企業は利用料、成果報酬ともに無料で利用できる。
主なマッチング対象は自動車部品やロボット、家電製品、機械装置などの加工組み立てや図面を使ったオーダーメイドの部品加工、試作日品や少量生産の製作、フライスや旋盤、研削の加工などとなっている。
受注企業は個別の営業をしなくても、自社の強みをシステムに登録することでAIが全国から商談をマッチングする。発注企業としても、AIによって手間をかけることなく最適な企業を選定できる。AIを使わずに自社で探して依頼することもできる他、要件を公開して応札を希望する受注企業から見積もりを募ることもできる。複雑な案件などはKPFにコーディネートを依頼することも可能だ。
請求や支払など受発注取引に必要なプロセスをインターネット上で完結できるデジタル取引支援機能を提供しており、新規取引に伴う口座開設や秘密保持契約の締結などが不要となる。取引相手とはチャットでコミュニケーションが取れる。
納品物の検収後、代金はKPFから受注企業へ現金で振り込まれる。与信管理はマネーフォワードケッサイが展開する企業間の請求代行や決済代行を行うサービス「マネーフォワードケッサイ」で行うため、債券未回収のリスクはない。
製造業で鍛え上げたAI、全国展開も構想
KPFの代表幹事企業で、金属加工を手掛ける広伸 代表取締役の石川裕氏は「当社の主要顧客は住宅メーカーだが、人口減などで需要減少が続いている。新たな顧客を開拓するにつれて多品種少量生産から“超”多品種少量生産になっており、デジタル化を進めようにも人材が足りず後れを取っている。また、営業力の低下や廃業などの影響もあり、発注企業が新規案件で適切な受注企業を探すことも困難で、受発注企業ともに新たな受注機会を増やすためのマッチングへの期待が高まっている」と語る。
NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション部 スマートワールドビジネス部 スマートファクトリー推進室 担当課長の大塚克美氏は「2023年度までに近隣の2、3の自治体と連携し、2025年度を目標に技術力を持つ地域の中小製造業、自治体と連携して全国展開を見据えていきたい」と述べる。
NTTドコモでは2020年にもAIを活用した製造業受発注マッチングプラットフォームのトライアルサービスを行っていた。大塚氏は「2021年までに約200社に登録いただき、100件のマッチングができた。NTTドコモとして製造業に精通しているわけではなく、受注企業と密接に関わりながら加工方法などを1つ1つデジタル化してAIを構築していった。その中で発注企業からは新しい取引先が見つかった、受注企業からは想定しいなかった企業から発注が来たなどの声もいただいた」と振り返る。
門真市 市民文化部 産業振興課 課長の高田(「高」ははしごだか)隆慶氏は「門真市は従業者数、売上高、付加価値額の指標において製造業が突出して大きい。今回の受発注システムが全国から受注を獲得できるポテンシャルがあると認識しており、製造業が持つ地域経済への波及効果を通じて商業やサービスなど他産業含めた雇用や所得、消費の拡大につながり、さらなる経済成長の好循環が実現すると期待している」と語る。
門真市内ではKPF受発注システムを含めて地域未来投資促進法に基づく4件の地域経済けん引事業が予定されており、「それら全てで計3億7000万円の経済効果を出したい」(高田氏)とする。
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