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鉄スクラップ検収をAIで効率化、低CO2排出の電炉法の活用拡大へ:リサイクルニュース
トピー工業は東京大学発のスタートアップEVERSTEELと共同で鉄スクラップをAIで解析する実証実験を開始した。
トピー工業は2023年4月12日、東京大学発のスタートアップEVERSTEELと共同で鉄スクラップをAI(人工知能)で解析する実証実験を開始したと発表した。鉄スクラップの等級判定やダスト量の解析、不適合品の検出など鉄スクラップの検収作業を効率化する。査定結果のばらつきや人材不足の解決にもつなげる。
鉄鋼業界は日本国内のCO2排出量の11.5%を占めるという。鉄スクラップをリサイクルして製鋼する電炉法は、鉄鉱石や石炭を使用して製鋼する高炉法に比べてCO2排出を抑制できるのがメリットだ。
ただ、鉄スクラップは建築材料、ドラム缶やガスボンベ、冷蔵庫などの電化製品までさまざまなものが混在しており、品質や異物の判別が難しい。また、熟練の検収員による品質や異物の判断に依存しているため、査定結果のばらつきも発生する。こうした状況もあり、国内の粗鋼生産量における電炉法の割合は30%にとどまっている。
これまで、トピー工業とEVERSTEELは鉄スクラップの画像解析技術を開発してきた。2022年12月から実証実験を開始し、現時点では熟練の検収員と同等の判定精度を得られているという。今後も実用的なシステムの開発を進め、鉄スクラップ検収業務の改善や、電気炉への鉄スクラップ装入や溶解など製鋼プロセス全体の最適化を目指す。
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