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7月から半導体製造装置23品目を新たに輸出規制対象に、その対象品目の内訳:FAニュース
日本政府は、新たに半導体製造装置23品目を輸出貿易管理対象とする省令の意見公募を開始した。
日本政府は2023年3月31日、新たに半導体製造装置23品目を輸出貿易管理対象とする外国為替及び外国貿易法(外為法)における経済産業省令の改正案について意見公募(パブリックコメント)を開始した。意見公募は同年4月29日まで行い、改正された省令は早ければ7月から施行される。
経済産業省では省令改正の理由について「国際的な安全保障環境が厳しさを増す中、軍事転用の防止を目的とする他、半導体製造装置に関する関係国の最新の輸出管理動向なども総合的に考慮して、特定の貨物や技術を輸出管理の対象に追加する」としている。
中国やロシアなどに対象の製品や技術を輸出したり移転したりするためには、経済産業大臣の許可を受ける義務が発生する。ただ、米国やオランダなど「輸出管理を厳格に実施している国」への輸出については個別の認可は必要なく包括申請が可能だ。追加で対象となった品目について以下で示す。主にEUV(極端紫外線)露光装置関連をはじめとした先端半導体製造技術を規制対象としている。
追加で規制対象となる品目
- EUVペリクル製造装置(EUV用の装置のために設計したものに限る)
- ステップアンドリピート方式またはステップアンドスキャン方式の露光装置で、光学方式のもののうち、光源の波長が193nm以上のものであり、かつ、nmで表した光源波長に0.25を乗じて得た数値を開口数の値で除して得た数値が45以下のもの
- EUVを用いて集積回路を製造する装置用に調合したレジストを塗布し、成膜し、加熱し、または現像するために設計した装置
- ドライエッチング用に設計した装置であって、次のいずれかに該当するもの
- 等方性ドライエッチング用に設計し、または改造した装置であって、シリコンゲルマニウムのシリコンに対するエッチング選択性の比率が100倍以上であるもの
- 異方性ドライエッチング用に設計および改造した装置で次の全てに該当するもの
- 高周波のパルス出力の電源を1つ以上持つもの
- 切替時間が300ミリ秒未満の高速ガス切り替え弁を1つ以上持つもの
- 温度制御領域が20以上ある静電チャックを持つもの
- ウェットエッチング用に設計した装置でシリコンゲルマニウムのシリコンに対するエッチング選択性の比率が100倍以上であるもの
- 異方性エッチング用に設計した装置であり、誘電体の材料に対してエッチングの幅に対する深さの比率が30倍を超え、かつ、幅寸法が100nm未満の形状を形成することができるもので、高周波パルス出力電源を1つ以上持ち、切り替え時間が300ミリ秒未満の高速ガス切り替え弁を1つ以上持つもの
- 半導体製造装置の成膜装置で次のいずれかに該当するもの
- 電気メッキによりコバルトを成膜するように設計されたもの
- コバルトまたはタングステンをボトムアップ成膜によって充填する工程において充填する金属の空隙または継ぎ目の最大寸法が3nm以下に設計した化学的気相成長装置
- 単一のチャンバー内での複数の工程によって金属のコンタクト層を成膜するように設計された装置で次の全てに該当するもの
- ウエハーの基板温度を100℃以上500℃未満に維持しながら、有機金属化合物を用いてタングステンの層を成膜するもの
- 水素(水素と窒素、アンモニアとの混合物を含む)を用いたプラズマによる工程を有するもの
- 半導体製造装置で、複数のチャンバーまたはステーション内での複数工程によって成膜するもので、かつ複数工程間において0.01パスカル以下の真空状態または不活性の環境を維持することができるように設計されたもの(以下、特定半導体製造装置)の内、次の全ての工程で金属のコンタクト層を成膜するように設計されたもの
- ウエハーの基板温度を100℃超500℃未満に維持しながら、水素(水素と窒素、アンモニアとの混合物を含む)を用いたプラズマにより表面処理を行う工程
- ウエハーの基板温度を40℃超500℃未満に維持しながら、酸素またはオゾンを用いたプラズマにより表面処理を行う工程
- ウエハーの基板温度を100℃超500℃未満に維持しながら、タングステンの層を成膜する工程
- 特定半導体製造装置の内、次に挙げる全ての工程で金属のコンタクト層を成膜するように設計されたもの
- リモートプラズマ源およびイオンフィルターを用いて表面処理を行う工程
- 有機金属化合物を用いて銅の上に選択的にコバルトの層を成膜する工程
- 仕事関数金属(トランジスタの閾値電圧を制御するための材料)の原子層堆積装置で、次の条件に当てはまるもの
- 2つ以上の金属の供給源を持つもので、アルミニウムの前駆体用に設計された供給源を1つ以上持ち、45℃超の温度で作動するように設計された前駆体容器を持つ
- 仕事関数金属を成膜するよう設計された装置で、炭化チタンアルミニウムを成膜するもので、4.0電子ボルト(eV)超の仕事関数を実現するもの
- 特定半導体製造装置のうち、次に掲げる全ての工程により金属のコンタクト層を成膜するように設計したもの
- ウエハーの基板温度を20℃超500℃未満に維持しながら、有機金属化合物を用いて窒化チタンまたは炭化タングステンの層を成膜する工程
- ウエハーの基板温度を500℃未満に維持しながら、0.1333パスカル〜13.33パスカルの圧力でスパッタリング法によりコバルト層を成膜する工程
- ウエハーの基板温度を20℃超500℃未満に維持しながら、133.3パスカル超、13.33キロパスカル未満の圧力で有機金属化合物を用いてコバルトの層を成膜する工程
- 特定半導体製造装置のうち、次に掲げる全ての工程により銅配線を形成するように設計されたもの
- ウエハーの基板温度を20℃超500℃未満に維持しながら、133.3パスカル超13.33キロパスカル未満の圧力で有機金属化合物を用いてコバルトまたはルテニウムの層を成膜する工程
- ウエハーの基板温度を500℃未満に維持しながら、0.1333パスカル超13.33パスカル未満の圧力で物理的気相成長法を用いて銅の層を成膜する工程
- 有機金属化合物を用いてバリヤー膜またはライナーを選択的に成膜するように設計した原子層堆積装置
- ウエハーの基板温度を500℃未満に維持しながら、絶縁膜と絶縁膜との隙間(幅に対する深さの比率が5倍を超え、かつ幅が40nm未満に限る)にタングステンまたはコバルトを空隙が生じないように充填するように設計した原子層堆積装置
- 0.01パスカル以下の真空状態または不活性ガスの環境において金属の層を成膜するように設計された装置で、次の全てに該当するもの
- ウエハーの基板温度を20℃超500度未満に維持しながら、化学的気相成長法または周期的堆積法により窒化タングステンの層を成膜するもの
- ウエハーの基板温度を20℃超500℃未満に維持しながら、133.3パスカル超53.33キロパスカル未満の圧力で化学的気相成長法または周期的堆積法によりタングステンの層を成膜するもの
- 0.01パスカル以下の真空状態または不活性ガスの環境において金属の層を成膜するように設計された装置で、次のいずれかに該当するもの
- バリヤー膜を用いずに選択的にタングステンを成長させるもの
- バリヤー膜を用いずに選択的にモリブデンを成長させるもの
- ウエハーの基板温度を20℃超500℃未満に維持しながら、有機金属化合物を用いてルテニウムの層を成膜するように設計した装置
- 空間的原子層堆積装置(回転軸をもつウエハーの支持台を有するものに限る)で、次のいずれかに該当するもの
- プラズマにより原子層を成膜するもの
- プラズマ源を有するもの
- プラズマ照射領域にプラズマを閉じ込めるためのプラズマシールドまたは手段を有するもの
- 400℃超650℃未満の温度で成膜する装置またはウエハーが設置された空間とは異なる空間で発生させたラジカルにより化学反応を促進させることで成膜する装置で、次の全てに該当するシリコンおよび炭素を含む膜を形成するように設計されたもの
- 5.3未満の比誘電率のもの
- 水平方向の開口部の寸法が70nm未満のパターンにおいて当該寸法に対する深さの比率が5倍を超えるもの
- パターンのピッチが100nm未満の構造のもの
- マスク(EUVを用いて集積回路を製造するための装置用に特に設計したものに限る)に使用するための多層の反射膜をイオンビーム蒸着または物理的気相成長法により成膜するように設計した装置
- シリコン(炭素を添加したものを含む)またはシリコンゲルマニウム(炭素を添加したものを含む)のエピタキシャル成長用に設計された装置で、次の全てに該当するもの
- 複数のチャンバーを持ち、かつ複数の工程間において0.01パスカル以下の真空状態または水と酸素の分圧が0.01パスカル未満の不活性な環境を維持することができるもの
- 前処理としてウエハーの表面を清浄化するために設計したチャンバーを1つ以上持つもの
- エピタキシャル成長の動作温度が685℃以下であるもの
- 厚さが100nm超であり、かつ応力が450メガパスカル未満のカーボンハードマスクをプラズマにより成膜するように設計された装置
- タングステンの膜(フッ素の原子数が1m3当たり10の19乗未満のものに限る)を、プラズマを用いた原子層堆積法または化学的気相成長法により成膜するように設計された装置
- 金属配線間の隙間(幅が25nm未満であり、かつ深さが50nm超のものに限る)に比誘電率が3.3未満の低誘電層を空隙が生じないようにプラズマを用いて成膜するように設計された装置
- 0.01パスカル以下の真空状態において稼働するアニール装置で、次のいずれかに該当するもの
- 銅のリフローを実施することにより、銅配線の空隙または継ぎ目を最小化し、またはなくすことができるもの
- コバルトまたはタングステンの充填金属のリフローを実施することにより、空隙または継ぎ目を最小化し、またはなくすことができるもの
- 0.01パスカル以下の真空状態において、高分子残さおよび銅酸化膜を除去し、かつ銅の成膜を可能にするように設計された装置
- 複数のチャンバーまたはステーションを持つ装置で、ドライプロセスにより表面の酸化物を除去する前処理を行うように設計されたもの、またはドライプロセスにより表面の汚染物を除去するように設計したもの
- ウエハーの表面改質の後に乾燥を行う工程を有する枚葉式のウェット洗浄装置
- EUVを用いて集積回路を製造するための装置用のマスクブランクまたは当該装置用のパターン付きのマスクを検査するように設計した装置
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