富士経済は2023年3月27日、コネクテッドカーの世界市場調査の結果を発表した。
2035年の新車のコネクテッドカー販売台数は、2022年比2倍の9230万台に拡大すると見込む(乗用車と商用車の合計)。セルラー通信を利用して車車間/路車間通信を行うセルラーC2X(C-V2X)の車載機は2035年に同97.4倍の4870万台に増加する。中国での標準装備化や、米国でDSRCからC-V2Xへの切り替えが進むことが増加に寄与する。
商用車もコネクテッドカーに
乗用車と商用車を合わせたコネクテッドカーの2023年の新車販売台数は、前年比11.6%増の5080万台を見込む。半導体不足の影響が残るものの、年後半に市況が回復するという。今後も自動車メーカーやティア1サプライヤーが活発に投資することで、2035年まで拡大が続く。
市場のけん引役は乗用車で、コネクテッドカー比率は2022年の58.0%から2025年に69.2%、2035年に85.4%に上昇する。商用車もコネクテッドカー比率が高まり、2025年ごろに60%以上、2035年には86.2%に増加すると予想する。
コネクテッドカーの通信形態では車載セルラー通信モジュールが増加しており、2023年時点でもコネクテッドカーの86.2%が採用している。2035年には車載セルラー通信モジュールの採用率が90%近くまで上昇する。スマートフォンの通信機能を使うモバイル連携のコネクテッドカーも引き続き成長する予想だ。AppleのCarPlayやGoogleのAndroid Autoのようにトレンドに合わせたサービスやユーザビリティが受けられるため、ニーズが高い。
DSRCかセルラーV2Xか
V2X車載機の市場規模は、2035年にDSRC(狭域通信:Dedicated Short Range Communications)が2022年比16.7倍の500万台、C-V2Xが97.4倍の4870万台と見込む。
DSRC対応車の販売台数は専用周波数帯を採用する日本でも少数にとどまっているものの、C-V2Xの製品化と普及に時間がかかるためDSRC車載機の需要が継続する。中長期的にはC-V2XとDSRCのハイブリッド型が登場する可能性もあるという。欧州ではフォルクスワーゲンがDSRCによるV2Xを新型EVの採用を進めており、2023年以降は他の自動車メーカーも市場投入すると期待される。また、北米では大型の商用車でDSRCの採用が検討されている。
C-V2Xは中国で先行する。BYDやGM(General Motors)、フォードがC-V2X対応車両の販売を開始した。現在は高級車が中心で市場は小規模だが、政府は2025年に新車の半数にV2Xを採用する方針で、2030年から標準装備化する計画もあるため、市場が大幅に拡大すると見込む。
米国では、FCC(連邦通信委員会)が5.9GHz帯をC-V2Xに再割り当てすることを決め、DSRCからC-V2Xへの移行が進みそうだ。将来的には中国に次ぐ規模になると予想する。欧州でも、2025年からのユーロNCAPへの対応でC-V2Xの搭載がスタートし、5Gが普及する2030年以降にC-V2Xの市場拡大が本格化する見通しだ。なお、海外でC-V2Xに使われている5.9GHz帯は日本で放送用に割り当てられているため、放送事業者との調整や電波法などの改正、電波干渉の解消など課題が多い。
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