ヒト常在性ビフィズス菌が消化管粘液のムチンを分解する機構を解明:医療技術ニュース
京都大学は、ヒト常在性ビフィズス菌Bifidobacterium bifidum由来の酵素スルフォグリコシダーゼについて、腸内細菌の栄養源となるムチン糖鎖を分解するメカニズムを明らかにした。
京都大学は2023年3月3日、ヒト常在性ビフィズス菌Bifidobacterium bifidum(B. bifidum)由来の酵素スルフォグリコシダーゼ(BbhII)について、腸内細菌の栄養源となるムチン糖鎖を分解するメカニズムを明らかにしたと発表した。東京大学、西オーストラリア大学、ワーゲニンゲン大学、北里大学、近畿大学、滋賀県立大学との共同研究による成果だ。
健康や疾患に影響を与える腸内細菌叢は、食事の成分や腸管から分泌される粘膜由来成分により組成が変化する。その粘液の主成分となるムチンは、多くの糖鎖を有しており、腸内細菌の栄養源として機能している。
今回の研究では、糖鎖分解酵素を多く有するビフィズス菌B. bifidumに着目。マウスにB. bifidumを経口投与し、盲腸および糞便中で遊離糖やムチン糖鎖のプロファイルが変化することを確認した。
特に、B. bifidumのみを定着させた無菌マウスでは、ムチン糖鎖が大幅に減少していた。一方、硫酸化ムチン分解の鍵酵素であるスルフォグリコシダーゼの欠損株を投与した場合では、反応産物の遊離量が減少し、ムチン分子上に硫酸化糖鎖が残ったままだった。
ヒト糞便の解析でも、スルフォグリコシダーゼの遺伝子量と反応産物の間に正の相関が認められた。このことから、ヒト腸管でも、B. bifidumによりムチン糖鎖が分解されていることが示唆された。反応産物は、Bacteroides属細菌など、他の腸内細菌に利用されていることが分かった。
また、スルフォグリコシダーゼのX線結晶構造解析と生化学的解析では、硫酸化糖を特異的に認識すること、同酵素中のCBM32ドメインが硫酸化糖を認識して結合することが示された。CBM32が結合性を失った場合、ムチン糖鎖の分解性は低下した。
ムチン分解性を持つ腸内細菌は、ムチン結合性のCBMを多く持つグループとそうでないグループに分けられることも判明。このグループ分けの鍵酵素として、エンドO-グリカナーゼ(glycoside hydrolase family 16 subfamily 3)を見出した。B. bifidumは、エンドO-グリカナーゼを持たないグループであり、スルフォグリコシダーゼを介して硫酸化糖鎖を分解する経路を持つことが分かった。
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