日米では回復傾向も中国は減産、日系乗用車メーカーの生産実績:自動車メーカー生産動向(2/2 ページ)
2023年1月の自動車生産は、日系乗用車メーカー8社合計の世界生産台数が3カ月連続で減少した。中国生産が春節の影響により前年1月に比べて稼働日が減ったことで、大幅な減産を余儀なくされたのが最大の要因だ。
日産自動車
8社の中で最も大きな落ち込みを見せたのが日産だ。1月のグローバル生産は、前年同月比25.1%減の22万4236台と4カ月連続で前年実績を下回った。8社の順位ではスズキ、ホンダに次ぐ4位だった。このうち海外生産は、同30.2%減の17万9805台と4カ月連続のマイナスだ。
中でも最も大きく落ち込んだのが中国で、春節の影響により生産日数の少なかった他、主力車種である新型「エクストレイル」の伸び悩みなどにより、同71.7%減と大幅減となった。なお、この台数は小型商用車(LCV)を手掛ける東風汽車(DFAC)の株式売却に合わせ、LCVを除いて前年比を比較したもの。日産の中国事業として前年実績にLCVを含むと同75.7%減となる。北米は新型車効果などもあり好調で、米国が同35.3%増と2カ月連続のプラス、メキシコも同22.9%増と2カ月連続で増加した。英国も「キャシュカイ」の好調により同24.3%増と伸びを見せた。
国内生産は、前年同月比5.9%増の4万4431台とプラスを確保し、9カ月連続で前年実績を上回った。「エクストレイル/ローグ」の好調に加えて、前年1月が半導体不足で低迷したことが理由。ただ、コロナ禍前の2020年1月との比較では32.5%減にとどまっており、本格回復には程遠い状況だ。
ダイハツ工業
スズキに次いで高い伸びを示したのがダイハツ工業だ。1月のグローバル生産台数は、前年同月比9.9%増の14万840台と8カ月連続で増加した。けん引したのが海外生産で、同18.4%増の7万4864台と18カ月連続でプラスを確保。1月の海外生産として過去最高を更新した。中でもマレーシアが同40.2%増と好調で、インドネシアも同10.0%増と伸長。増産により受注残の解消が進んだことで、海外販売と世界販売も1月として過去最高を記録した。
国内生産は、前年同月比1.6%増の6万5976台と2カ月ぶりのプラスだった。前年1月がオミクロン株の感染拡大が仕入れ先や自社工場で広がり複数回にわたり稼働停止を実施した反動が表れた。ただ、登録車は前年の新型車効果が一巡したことで同17.5%減と低迷。一方、軽自動車はマイナーチェンジで人気を回復した「タント」や、受注残を抱えていた「ムーヴキャンバス」の増産などにより同10.1%増と伸長し、登録車の落ち込みをカバーした。
マツダ
マツダの1月のグローバル生産台数は、前年同月比6.0%減の9万8150台と3カ月連続で前年実績を下回った。主力の国内生産が同7.2%減の6万5491台と低迷し、国内生産も3カ月連続のマイナスとなった。半導体不足が続いており、主力車種の「CX-5」が同26.7%減と大きく落ち込んだ他、「マツダ3」も同24.1%減と低迷。新型車の「CX-60」は8490台だった。
海外生産は、前年同月比3.6%減の3万2659台と8カ月ぶりに前年実績を下回った。要因は中国事業の低迷で、需要に応じて生産調整を行った結果、同83.1%減と5分の1以下まで減少し、11カ月連続のマイナス。中国で生産する日系5社の中で最大の下げ幅となった。中国以外は軒並み好調で、タイは前年1月に稼働停止を実施したことに加えて、日本市場向け「CX-3」の生産を開始したため、同46.9%増と伸長した。メキシコも、前年の稼働停止の反動により同41.4%増。さらに前年1月から操業を始めた米国工場は同34倍となり、北米トータルでは同72.9%増と8カ月連続で増加した。
三菱自動車
三菱自動車の1月のグローバル生産台数は、前年同月比6.0%減の8万4888台と4カ月連続で減少した。特に海外生産が同18.7%減の4万6214台と厳しく、4カ月連続のマイナス。主要地域の東南アジアは、最大拠点を構えるタイが「トライトン」の落ち込みなどにより、同25.6%減と低迷。中国に至っては同60.9%減の大幅マイナスだった。市場が好調のインドネシアも同0.2%減と伸び悩み、アジアトータルでは同16.8%減となった。
一方、国内生産は同15.5%増の3万8674台と2カ月連続で増加した。これは前年12月から主力モデルの「eKスペース」および日産向けにOEM供給する「ルークス」のエアバッグ不具合で生産を停止した反動が表れた。
スバル
半導体不足の影響が大きく表れたのがスバルだ。1月のグローバル生産台数は、前年同月比22.3%減の5万251台と7カ月ぶりにマイナスへ転じた。中国事業のウエートの大きさから春節の影響で大幅減となったホンダや日産並みに低迷したことが、半導体不足の影響の大きさを物語っている。このためスバルは2月の決算発表時に、2022年度(2022年4月〜2023年3月)の生産計画を97万台から88万台へと下方修正している。
内訳は、主要拠点の国内生産が、前年同月比24.0%減の3万483台と10カ月ぶりに減少した。輸出も同17.8%減と6カ月ぶりのマイナス。唯一の海外拠点である米国生産も、同19.5%減の1万9768台と3カ月連続のマイナスだった。新型車を投入するなど主要市場でのさらなる拡販に期待がかかるものの、半導体不足が水を差す格好となっている。
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