9速DCTで運転しやすさと燃費改善を両立
新型エルフ向けにAT免許で運転可能な9速DCTを新開発し、燃費性能を追求した。多段化によってエンジンの回転数上昇が抑えられる。また、低騒音化による疲労を軽減するとともに、誰でも省燃費運転ができるようにする。デュアルクラッチによって変速時のトルク抜けやシフトショックを低減し、従来のトラックとは異なる運転感覚を実現した。
さらに、キャブの空力改善や省燃費タイヤの採用拡大によって燃費を低減した。2025年度燃費基準を全車で達成。2トン積みのアイドリングストップ付き9速DCTモデルは+15%を達成した。
バッテリー容量は40kWhから100kWhまで
エルフEVは、コンパクトな20kWhのバッテリーモジュールを組み合わせて、40kWhから100kWhまで用意する。普通充電と急速充電の両方に対応しており、外部給電も可能だ。
寒冷地でも運行できるよう、低温下では車両停車時でも自動で温度管理を行う。また、キャブ内の空調による電力消費を抑えるため、ヒートポンプ式空調システムを採用。シートヒーターを標準装備とした。2024年度には特装架装向けシャシーと、荷室への移動が可能なウォークスルーバンもエルフEVに追加する。
EVの導入検討やCO2排出削減効果の定量化、さらなる脱炭素化の提案などを行うトータルソリューションプログラム「EVision」も提供を始めた。EVの導入に当たって想定される充電設備や電気料金、環境負荷軽減効果の可視化などの課題に対し、検討段階から導入後まで各段階に向けたソリューションを提供する。
EVへの切り替えが可能な運行ルート、充電のタイムスケジュール、電気料金、施設電力デマンドなどを分析し、ユーザーが安心してEVを導入できるようサポ―トする。また、充電器の選定や施工業者の手配、設置、補助金申請といったトータルコーディネートや、運行計画に応じてバッテリーの劣化を予測したリース期間の設定などにも対応する。
エルフEVは過去3年にわたってモニター企業の協力を得ながら作り込んできた。いすゞ自動車 社長の片山正則氏は「最初は厳しい意見ももらったが、集大成としての発売となる。ハードウェアとしては3年前に完成していたが、物流の厳しい環境の中で電動車の在り方を考えた上での投入となる」とコメントした。
今後の環境技術については、EVだけがソリューションではないと語った。「水素エンジン、燃料電池、EV、カーボンニュートラル燃料など、1つに収束するにはこれから20年以上かかるだろう。それぞれの技術のポテンシャルは高い。選択肢は残しておきたい。商用車メーカーとしてはもっと環境に優しく、効率を落とさないものを提供していきたい。EVが一歩先に製品化したが、商用車の過酷な使われ方を考えると、EVの本格的な実用化に向けて性能とコストでもう1段2段のブレークスルーが必要だ」と片山氏は述べた。
働くドライバーへの思いやりも
新型エルフではドライバーへの思いやりをインテリアに反映させた。標準キャブは快適で疲れにくい空間を目指して、ドライバーの上方、前方、側方のクリアランスを大幅に拡大した。また、ドア開口部の拡大や上下2方向からアクセス可能なセミグリップ式ドアハンドルの採用により、乗降性や操作性を向上させた。
最適なドライビングポジションをとれるよう、ステアリングの小径化やシートの材質、表皮の縫製、スライドピッチの変更、ペダル位置などを最適化した。アームレストやシートヒーターの採用により、ドライバーの労働環境改善に貢献するとしている。
メーターパネルには7型のメーターディスプレイを採用。安全支援機能の作動状況や車両のコンディションを表示し、運転時の視線移動や操作を最低限にとどめる。ステアリングスイッチの採用やスイッチのレイアウト見直しにより、操作性も向上させている。
新型エルフ向けのコネクテッドサービスも提供する。2022年10月からサービス提供している商用車情報基盤「GATEX」を利用したテレマティクス「MIMAMORI」と、高度純正整備「PREISM」を展開する。また、EVシフトに向けて、PREISMと運行管理、充電マネジメントを両立するMIMAMORIを新規開発した。遠隔充電管理機能などにより、さまざまなエネルギーソリューションを提供する。
PREISMは車両だけでなくドライバーともつながることで、安心安全な稼働をサポートする。PREISMのコネクテッド技術を使った架装モニタリングは2023年中に車両に実装する。
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