AGCが過去最高の売上高を記録するも営業利益は低迷、不透明なロシア事業の譲渡を検討:製造マネジメントニュース(3/3 ページ)
AGCが2022年12月期通期業績を発表。売上高は前期比3385億円増の2兆359億円と過去最高記録した一方で、営業利益は前期比222億円減の1839億円となった。
2023年の通期業績見通し
2023年の通期業績から適用するセグメント変更についても公表した。セグメント変更では、ガラスセグメントを、建築ガラスセグメントと自動車用ガラスを扱うオートモーティブに分割した他、化学品セグメントを、化学品セグメントとライフサイエンスセグメントに分けた。建築ガラスセグメントはアジトと欧米のサブセグメントで構成されており、新たな化学品セグメントはクロールアルカリ/ウレタンを扱うエッセンシャルズケミカルズとフッ素/スペシャリティを展開するパフォーマンスケミカルズのサブセグメントから成る。
2023年の通期業績見通しに関しては、エッセンシャルケミカルズが前年度比で減益となる見込みだが、オートモーティブをはじめとするコア事業や戦力事業が伸長し、今回の減損損失計上による減価償却費減もあり増収および増益となり、売上高は前年比1141億円増の2兆1500億円で、営業利益は前期比61億円増の1900億円となる見込みだ。
ちなみに、既存事業であるコア事業は、ディスプレイ、エッセンシャルケミカルズ、パフォーマンスケミカルズ、建築用ガラス、オートモーティブの事業で構成され、新事業の戦略事業は、エレクトロニクス(電子)、ライフサイエンス、モビリティの事業から成る。
2023年における各セグメントの事業見通しについて、建築ガラスセグメントでは、欧州でインフレや景気減速などの懸念があるものの、エネルギー削減のための高断熱ガラスへの置き換え需要が出荷を下支えし、日本とアジアでは、高断熱/遮熱ガラス需要拡大により出荷が堅調に推移すると予想している。
オートモーティブセグメントでは、半導体を中心とした部品供給不足の影響緩和により自動車の生産台数が緩やかに回復し、自動車用ガラスの出荷が増えるだけでなく、これまで取り組んできた価格政策の効果発現を見込んでいる。
電子セグメントでは、液晶用ガラス基板は、構造改革施策の推進や需要の回復、減価償却費負担の減少により収益が改善する他、ディスプレイ用特殊ガラスは、主要な顧客からの受注が拡大し、出荷が伸長する見通しだ。さらに、オプトエレクトロニクス用部材は、スマートフォン市場の減速により踊り場となるが、半導体関連部材はEUV(極端紫外線)露光用フォトマスブランクスを中心に堅調に推移すると予想している。プリント基板材料も通信インフラや車載向け需要の拡大などで出荷が増えると見込む。
化学品セグメントでは、エッセンシャルケミカルズは、2022年末をボトムに緩やかな回復を予想しているが、年間では前年水準を下回ると推定している。パフォーマンスケミカルズは、半導体関連と輸送機器分野を中心に、フッ素関連製品の需要が堅調に推移し、出荷が増える見込みだ。
ライフサイエンスセグメントでは、合成医農薬とバイオ医薬品のCDMOの受託件数が増加する他、生産能力などの増強に伴い、費用が先行して発生すると推測している。
また、2021年に発表したとポートフォリオ変革プロジェクト「2023年のありたい姿実現に向けて」の進捗について、AGC 社長 執行役員 CEOの平井良典氏は、「当社のポートフォリオの方向性に合致し拡大していく戦略事業は、2023年にスマートフォン市場向け製品の出荷数減少や能力拡大に伴う先行費用の発生から、成長は鈍化する見込みだが、2024年には成長軌道に戻り、営業利益1000億円の達成を目指す。コア事業は、構造改革を実行し、投資を成長事業中心に厳選し、事業全体の収益性を高める。資産効率と炭素効率も改善し、ハイレベルで安定収益を実現する。こういった取り組みにより、2030年までに戦略事業の利益が全社の50%を超えるようにし、ポートフォリオの転換を顕著にする予定である」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AGCが「ガラス業界初」の取り組み、日米欧の3極に電波暗室を開設
AGCは、自動車用ガラスアンテナの開発拠点となる電波暗室をベルギーのゴスリーに建設したと発表した。日米欧の3極で自動車用ガラスアンテナの開発体制を整えたのは「ガラス業界初」(同社)だという。 - ウェアラブルデバイスの皮膚用粘着剤、AGCがウレタンで新提案
AGCは「第8回ウェアラブルEXPO」において、パッチ型ウェアラブルデバイスなどに最適な皮膚用ウレタン粘着剤を展示。従来のシリコーンやアクリルなどの材料と比べて、皮膚が蒸れにくく、抗菌性を有し、長期間の貼り付けでも皮膚ダメージが少ないことが特徴で、フレキシブル基板として回路を形成することもできる。 - AGCが新研究開発棟でオープンイノベーションを加速、JAIDとのコラボも進行中
AGCは、AGC横浜テクニカルセンター(YTC)内に建設していた新研究開発棟の完成を発表するともに、同研究棟内に開設した社内外の協創を加速させる協創空間「AO(アオ)」を報道陣に公開した。YTCにAGCの研究開発機能を集約するとともに、社内外の協創を推進するスペースを併設することでオープンイノベーションも加速させたい考えだ。 - 自動車メーカーが8.2秒で伝えるガラスの魅力、「真面目禁止」でJAIDとAGCが協創
国内自動車メーカーに所属するカーデザイナーが参画するJAIDとAGCは、デザイナーらによるクリエイティビティと、AGCが保有する先端材料・技術を融合させたアート展「8.2秒展」を開催(会期:2021年3月23日〜6月19日)。100以上のアイデアから厳選した6社7作品をAGCの未来創造スペース「AGC Studio」で展示している。 - AGCの「世界最速」の調光ガラス、新型ハリアーのパノラマルーフで採用
AGCは2020年6月18日、調光ガラス「WONDERLITE Dx」が量産車に初めて採用されたと発表した。 - ガラスが舞い踊りIoT化する、AGCがオープンイノベーションを強化
AGCは、東京都内で会見を開き、同社のオープンイノベーション戦略と協創プロジェクト「SILICA」について説明した。