マイクロLEDディスプレイ製造の新プロセス技術、指定された電極だけにACFを転写:FAニュース
信越化学工業とデクセリアルズは、異方性導電膜(ACF)をレーザーで狙った場所に転写できるマイクロLEDディスプレイ製造の新規プロセス技術を共同開発した。
信越化学工業は2023年1月11日、デクセリアルズとともに、マイクロLEDディスプレイ製造に向けた新規プロセス技術を開発したと発表した。今回の技術は、直径80μm以下に個片化した異方性導電膜(ACF)を、レーザーで狙った場所に転写できる。
新技術により、指定された電極だけに個片化したACFを飛ばし、その部分にLEDチップを搭載可能になったことで、これまで課題だったマイクロLEDディスプレイ製造時のリペアプロセスが容易になる。
さらに同社は、グループ企業の信越エンジニアリングおよび信越ポリマーと共同で、移送部品および移送装置として、硬化型ドナープレート「SQDP-B」シリーズ、多段形状ドットタイプ6インチ大型スタンプ「EZ-PETAMP」シリーズ、4工程を1台で対応可能なレーザー装置「Invisi LUM-X4」、Mini-LEDディスプレイ用BM封止フィルムを開発し、ラインアップに追加した。
SQDP-Bシリーズは、ハンダバンプ付きのマイクロLEDチップのレーザーリフトオフが可能な硬化型ドナープレートで、LEDウエハーを貼り合せた後に加熱硬化させると、転写後のチップの傾きと割れを防げる。この硬化型ドナープレートにより、クラックが発生しやすいMini-LEDチップやInGaN系および4元系赤色マイクロLEDチップまでレーザーリフトオフが可能になった。
EZ-PETAMPシリーズは、ドット(チップをピックアップする箇所)を多段形状に成型することで、低荷重でチップを選択的にピックアップ可能な6インチの大型スタンプとなっている。この多段形状により十分な高さを有するドットは、マウンターでの押し込みによる圧縮時の変形が少なく安定性に優れる他、ドットの高さが確保されているため、スタンプの粘着層とチップを供給する2ndドナープレートの粘着層が触れる不具合を大幅に減らせる。
Invisi LUM-X4は、マルチレーザーリフトオフ、レーザーマストランスファー、高速トリミングとリペアのレーザー使用といった4つの工程を1つにまとめたコンパクトな装置で、従来の量産向け装置と異なり、チップ個片化からマストランスファー、リペアにわたるレーザープロセスの取り組みが1台で行え、少量生産にも対応する。
Mini-LEDディスプレイ用BM封止フィルムは、Mini-LEDディスプレイのコントラストを向上させるとともに、Mini-LED素子を傷や汚れから保護する機能を備えている。
なお、マイクロLEDチップは、一辺の長さが数十μm以下となる。そのため、4Kディスプレイを製造する際には、1台当たり約2490万個のチップを規則正しく配列する必要がある。微小なマイクロLEDチップの製造工程と各チップの移送工程は複雑で、歩留まりとともにその改善に迫られてきた。そこで、信越化学工業は、デクセリアルズとともに、マイクロLEDディスプレイ製造に向けた新規プロセス技術を開発した
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