回復基調は継続するか、日系乗用車の世界生産は6カ月ぶりに前年割れ:自動車メーカー生産動向(2/2 ページ)
着実な回復基調を示していた自動車生産に陰りが見え始めた。2022年11月の自動車生産は、日系乗用車メーカー8社合計の世界生産台数が6カ月ぶりに前年割れとなった。
日産
8社の中で最も大きな落ち込みを見せたのが日産だ。11月のグローバル生産は、前年同月比22.8%減の24万8961台と2カ月連続で前年実績を下回った。8社の順位ではスズキに次ぐ4位となった。要因は海外生産で、同32.0%減の19万2348台と2カ月連続のマイナスだった。
国別では、好調だった米国が同15.2%減と10カ月ぶりにマイナスへ転じた他、メキシコも同23.6%減と振るわない。中でも最も大きく落ち込んだのが中国で、同59.5%減と半数以下だった。なお、この台数は小型商用車(LCV)を手掛ける東風汽車(DFAC)の株式売却に合わせ、LCVを除いて前年比を比較したもの。日産の中国事業として前年実績にLCVを含むと同63.4%減となる。唯一、英国は「キャシュカイ」の好調により同63.3%増と高い伸びを見せた。
海外が低迷した一方で、国内生産は前年同月比42.2%増の5万6613台と7カ月連続で前年実績を上回った。8社の国内生産では最も高い伸びとなる。「エクストレイル/ローグ」の好調に加えて、前年11月が低迷したことが理由。ただ、低迷していた2019年11月との比較でも13.0%減にとどまっており、日産の生産能力を考慮すると低水準と言わざるを得ない実績だ。
ダイハツ
8社の中で最も高い伸びを示したのがダイハツ工業だ。11月のグローバル生産台数は、前年同月比11.0%増の16万1375台と6カ月連続で増加。8社では唯一の2桁パーセント増となった。ダイハツの11月の世界生産としても過去最高を記録した。けん引したのが海外生産で、同18.4%増の7万7092台と16カ月連続でプラスを確保。11月の海外生産として過去最高となった。中でもマレーシアが同40.4%増と好調で、11月として過去最高を更新。インドネシアも同8.2%増と伸長した。
国内生産も堅調で、前年同月比4.9%増の8万4283台と4カ月連続のプラスだった。登録車は前年が高水準だったことの反動により同39.6%減と低迷したものの、軽自動車は同34.9%増と大幅に増加した。生産増は販売拡大にもつながり、軽自動車がけん引した国内販売台数は11月として過去最高を記録。その結果、グローバル販売台数も11月の過去最高記録を塗り替えた。
マツダ
好調を維持していたマツダは減少に転じた。11月のグローバル生産台数は、前年同月比6.5%減の10万3526台と6カ月ぶりに前年実績を下回った。主力の国内生産が同11.9%減の6万8399台と低迷したのが要因で、国内生産も6カ月ぶりのマイナスとなった。半導体不足が響いており、8社の国内生産で最大の落ち幅となった。車種別では「CX-5」は同0.2%減と前年並みだったが、「マツダ3」は同34.9%減、「CX-30」は同32.2%減と主力車種が大幅に減少した。
海外生産は、前年同月比6.0%増の3万5127台と6カ月連続のプラス。メキシコは、前年11月が半導体不足による稼働停止を実施したことで同32.9%増と伸長。さらに1月から操業開始した米国工場で新型車「CX-50」を3958台生産したことで、北米トータルでは同70.5%増となり、6カ月連続で増加した。タイも前年の稼働停止の反動のほか、日本市場向け「CX-3」の生産を開始したことにより、同173.6%増と3倍に近い台数となった。一方、中国は需要に応じて生産調整を行った結果、同67.9%減の大幅マイナスとなり9カ月連続で減少した。
三菱自
三菱自も半導体不足で低迷している。11月のグローバル生産台数は、前年同月比13.5%減の8万2720台と2カ月連続で減少した。特に海外生産は同16.6%減の4万8988台と冴えず、2カ月連続のマイナス。主要地域の東南アジアは、最大拠点を構えるタイが同30.9%減と低迷。中国に至ってはコロナ禍に加えて「アウトランダー」のモデル切り替えも重なり、同80.0%減の大幅マイナスとなった。一方、市場が好調なインドネシアは同27.4%増と伸びを見せたが、アジアトータルでは同17.1%減となった。
国内生産も半導体不足に悩まされている。前年同月比8.5%減の3万3732台で、2カ月連続で前年実績を下回った。「アウトランダーPHEV」や、軽の電気自動車(EV)である「eKクロスEV」および日産向けに生産する「サクラ」など新型車の受注は好調なものの、半導体不足で生産できない状況が続いており、特に人気の高いサクラは受注を停止している。
スバル
SUBARU(スバル)の11月のグローバル生産台数は、前年同月比4.8%増の8万1432台と5カ月連続で前年実績を上回った。主力拠点の国内生産は、前年が東南アジアからの部品供給難の影響があった反動で、同9.8%増の5万6985台と8カ月連続で増加した。その結果、輸出も同24.0%増と4カ月連続のプラスとなった。
その一方で、唯一の海外拠点である米国生産は、前年同月比5.2%減の2万4447台と4カ月ぶりにマイナスへ転じた。米国など海外販売は好調に推移しているが、国内に比べて半導体不足の影響が大きく、生産調整を余儀なくされる格好となった。
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