「LIMEX」や「CirculeX」の開発でMIを採用、環境配慮型の素材開発を加速:マテリアルズインフォマティクス
TBMは、統計分析などの情報科学を応用したマテリアルズインフォマティクスの手法を新規素材開発に採用する。
TBMは2023年1月5日、統計分析などの情報科学を応用したマテリアルズインフォマティクス(MI)の手法を新規素材開発に採用すると発表した。MIを活用することで、開発期間の短縮化や機能性の高度化、品質の安定性向上を目指す。
日本企業への導入実績もある米国のEnthoughtが提供する「マテリアルズ・インフォマティクス・アクセラレーションプログラム」も採用し、社内のMI能力開発や人材育成、体系的なデータ管理体制の構築、素材開発課題を解決するMIソリューションの構築に活用する見込みだ。
今後は、石灰石を主原料とする環境配慮型の新素材「LIMEX(ライメックス)」や再生素材「CirculeX(サーキュレックス)」といった素材開発の効率化と高度化を目指し、先進技術であるMIの実用化を推進する。
単一素材と同様にリサイクル可能な複合素材であるLIMEXや再生素材のCirculeXの開発では、大手の素材および化学メーカー出身の研究開発メンバーが中心となり、同社のテクノロジーセンターや保有する製造拠点である白石工場(宮城県白石市)、多賀城工場(宮城県多賀城市)、横須賀工場(神奈川県横須賀市)で、材料設計や製造条件の確立、物性評価などの品質管理を行っている。
また、LIMEXの環境性能の向上や次世代の素材開発、再生素材の高付加価値化に向けた研究開発も進めている。こういった研究開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催する「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」で採択されている他、知財活用を評価する「知財功労賞経済産業大臣表彰」の受賞、世界の革新的な技術を評価する中国のアワード「100 Best Industrial Innovations for International Technology Transfer」でのTOP20選出などを受け、国内外から評価を得てきた。
MIとは、統計分析などのインフォマティクスの手法を応用し、素材開発の効率を高める手法で、世界各国の化学および素材メーカーがMIを導入することで成果を上げつつあり、国内でも政府主導でMIの普及に向けたさまざまな取り組みが推進されている。国内の大手企業では、機械学習によって材料設計や物性値などにかかわるデータを分析し、効率的に新規材料を探索した事例が出始めている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 資源循環コーディネートサービスの回収品目を拡充、プラ製のフタやラベルも対象に
TBMは、同社が提供する資源循環コーディネートサービス「MaaR for business」の回収対象品目とサービス利用で交換できる環境配慮製品のラインアップを拡充し、サーキュラー・エコノミーの実現を推進している。 - 無機物を主原料とする複合素材の普及拡大を目的とする協会を設立
TBMなど4団体が、無機物を主な原料とする複合素材の普及、拡大を目指す「無機・有機複合マテリアル協会」を設立した。環境負荷を低減した社会に向けて、紙やプラスチックの代替品となる複合素材の標準化や認証活動を進めていく。 - 日立とライオン、MI活用でハミガキの最適組成を自動提案するシステム開発
日立製作所とライオンは、ハミガキの製造プロセスの課題を事前予測し、最適な組成を自動提案するシステムを開発した。MIを適用した「材料開発ソリューション」を活用している。 - 積水化学がCCUの実証プラントを稼働、MIの開発効率も2〜10倍に向上へ
積水化学工業が同社グループの製品・技術を通じた社会課題解決の取り組みについて説明。環境課題の解決に貢献する新技術として注力しているフィルム型ペロブスカイト太陽電池、バイオリファイナリー、CCU技術の開発進捗状況を報告した。 - AGCが内製ツールで挑むマテリアルズインフォマティクス、新組成を8倍速で発見
AGCは2022年6月から本格運用を開始した独自開発マテリアルズインフォマティクス(MI)ツールについて説明。「ARDIS」と「AMIBA」の2つで、2025年をめどに技術本部R&D部門へのシステム導入と、これらMIツールを活用できるMI人材の育成を完了させる計画である。 - 日立が実験回数4分の1のマテリアルズインフォマティクス技術、三井化学と実証へ
日立製作所は、同社が開発した新たなマテリアルズインフォマティクス(MI)技術について三井化学と共同で実証試験を開始すると発表した。三井化学が提供する過去の開発データを用いて、このMI技術の有効性を検証したところ、従来のMI技術と比べて高性能な新材料の開発に必要な実験の試行回数を4分の1に削減できることを確認したという。