宇宙ごみ除去のアストロスケールが創業10周年「次の10年で宇宙を持続可能に」:宇宙開発(3/3 ページ)
アストロスケールが宇宙の持続可能な利用に向けたスペースデブリ除去をはじめとする同社の事業について説明。2023年で創業10周年を迎える同社は、JAXAや衛星通信サービスを提供するOneWebなどとの契約を締結するなど着実に事業を拡大している。
本社を移転、工場は500kgクラスの衛星を同時に4機生産可能
また、創業10周年を迎える2023年5月には、アストロスケールホールディングスとアストロスケール日本法人の本社を移転し、衛星などを生産する工場の生産能力を拡大する。現在の本社はJR錦糸町駅から西側の大横川親水公園沿いにあるが、新本社は同駅東側の横十間川沿いに新設された「ヒューリック錦糸町コラボツリー」に入居する予定だ。
広さ515m2の1階では、衛星の製造や衛星部品の試験を行うクリーンルームを備えた工場エリアとなる。伊藤氏は「500kgクラスの衛星を同時に4機生産することが可能」と説明する。2階はミッション管制室と一般来場可能な見学エリア、3階は200人以上の従業員の入居を想定したオフィスエリアを設ける。
また、2023年2月には、アストロスケール日本法人の新たな代表取締役社長として、三菱電機やGE、ロッキード・マーティン、タレス・アレーニア・スペースなど宇宙業界で35年以上の経験を有する加藤英毅氏が就任する予定だ。伊藤氏は、今後も副社長としてアストロスケール日本法人の活動に貢献していく。
岡田氏は「現行のコンステレーションの交換時期を迎える2026年には、宇宙のデブリ環境はさらに悪化することは確実だ。当社は、そうならないように軌道上サービスを提供して状況の改善に貢献したい。米国連邦通信委員会(FCC)が衛星運用期間の25年ルールを見直し、5年に短縮したことによりデブリ除去の需要は確実に拡大するとみている。今後10年間の累計で2兆円規模となるこの市場をリードし、宇宙を持続可能にしていきたい」と述べている。
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