運用終了後の衛星を捕獲、スペースデブリ回収用のドッキングプレートを発表:宇宙開発
アストロスケールホールディングスは、スペースデブリを回収するためのドッキングプレートを発表した。捕獲対象の宇宙機にあらかじめ搭載して、宇宙機の運用終了時に安全に捕獲することで、宇宙環境の保護に貢献する。
アストロスケールホールディングスは2021年11月16日、スペースデブリを回収するためのドッキングプレートを発表した。捕獲対象の宇宙機にあらかじめ搭載して、宇宙機の運用終了時に安全に捕獲することで、宇宙環境保護に貢献する。
同ドッキングプレートは、軽量、コンパクトで、サイズなどを宇宙機ごとにカスタマイズできる低コストのソリューションだ。接着剤を使わず機械的に固定するため、故障や劣化の可能性が低い。宇宙空間で15年以上にわたって機能と性能を保てる設計になっており、堅牢性は宇宙環境の品質検査と試験で実証済みだ。
捕獲対象に適した識別マーカーと反射器を備え、正確な位置と姿勢情報で近傍接近運用をサポートする。外部からの取り付け、組み立ても容易で、宇宙機の筐体に埋め込むことも可能だ。同社が開発する捕獲機(サービサー)に搭載した磁石やロボットでの捕獲を想定している。
現在、軌道上にて、同ドッキングプレートのプロトタイプを搭載したデブリ除去技術実証衛星「ELSA-d(End-of-Life Services by Astroscale-demonstration:エルサディー)」の実証が進行中だ。ELSA-dは、運用終了した衛星の除去技術と商業的に実行可能であるかを実証する初の衛星となる。
今後10年間で、何万機もの衛星が低軌道に打ち上げられると見込まれ、それに伴い、スペースデブリの数も年々増加することが予測される。運用終了の衛星の除去は、稼働中の衛星への衝突を回避し、宇宙環境を保護することにつながる。
同社では、将来的に同ドッキングプレートを低軌道上衛星に標準搭載すること、同社の捕獲機を用いて、運用終了した衛星を捕獲するサービスの展開を目指している。
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