未経験者でもトマトの収量が倍増、ローカル5G遠隔農作業支援の実力:スマートアグリ(2/2 ページ)
NTT東日本が東京都農林水産振興財団と共同して開発を進めている「ローカル5Gを活用した遠隔農作業支援」の進捗状況を説明。一般的なハウス栽培の2倍の収量と高い糖度を実現したという。
「HoloLens 2」を使って生育調査、ハウス内でのドローン活用も
スマートグラスを用いた取り組みでは、マイクロソフトの「HoloLens 2」による生育調査におけるデジタルデータの収集を紹介した。従来、作物の生育データを取得する生育調査はメジャーなどを使って手作業で茎長や葉長を測ってメモ帳に記入し、Excelにデータを打ち込むというのが一般的だった。これに対して、計測したい箇所の両端を指でポイントして自動計測するHoloLens 2のアプリを活用することで、自動集計とデータ送信、クラウドへの自動保存などが可能になる。実際に、これまで8株分の生育調査に50分かかっていたが、スマートグラスの活用で36分に短縮できた。今後は蓄積したデータをAIで解析して、遠隔支援によるスマート農業をさらに進化させられる可能性がある。
現在、新たに進めている取り組みとしてはハウス内でのドローン活用がある。ドローンを使えば、定点設置の4Kカメラやスマートグラス、走行型カメラではカバーしきれない生育状況の把握が可能になる。しかし、空間が狭く鉄骨などの障害物が多いハウス内でドローンを飛行させるのは難しい。そこで現在は、機体の上方と下方にそれぞれ搭載する3つのカメラと前方カメラ、合計7つのカメラで全方位認識が可能なSkydioのドローンを用いた自律飛行と、ローカル5Gを介した遠隔地からのドローン操作という2つのアプローチを検討している。
Skydioのドローンについては、現時点では障害物との離隔距離は87cmになっているが今後は28cmまで近づけ、より詳細な生育状況の映像データ取得や狭い栽培レーンでの飛行などを可能にしたい考え。ローカル5Gを介した遠隔操作は、現時点では離陸とホバリング状態での旋回しか行えないため、安定した飛行や空撮などを実現していく方針である。
なお、2023年度の実用化に向けては「選択肢を広げる」「導入しやすい工夫」「地域との協働」を挙げている。例えば、「選択肢を広げる」ではローカル5GにこだわらずWi-Fiでどこまでやれるかの検証を進める他、「導入しやすい工夫」では導入コストとして初期費用や月額費用とせずに、成果連動型のビジネスモデルを模索する方針を示している。
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