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未経験者でもトマトの収量が倍増、ローカル5G遠隔農作業支援の実力スマートアグリ(1/2 ページ)

NTT東日本が東京都農林水産振興財団と共同して開発を進めている「ローカル5Gを活用した遠隔農作業支援」の進捗状況を説明。一般的なハウス栽培の2倍の収量と高い糖度を実現したという。

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 東日本電信電話(以下、NTT東日本)は2022年12月20日、同社の実証フィールド「NTTe-City Labo」を構えるNTT中央研修センタ(東京都調布市)で会見を開き、東京都農林水産振興財団と共同して開発を進めている「ローカル5Gを活用した遠隔農作業支援」の進捗状況を説明した。2020年4月に連携協定を締結してから、同センタ内に東京都農林総合研究センターが開発した環境制御型の農業ハウス「東京フューチャーアグリシステム」を導入して約350株の大玉トマト栽培を行っており、遠隔農作業支援の活用により一般的なハウス栽培の2倍の収量と高い糖度を実現したという。NTT東日本はグループ企業のNTTアグリテクノロジーなどと連携し、2023年度内に遠隔農作業支援技術の実用化を進めたい考えだ。

マイクロソフトの「HoloLens 2」を装着して遠隔農作業支援を受ける様子
マイクロソフトの「HoloLens 2」を装着して遠隔農作業支援を受ける様子[クリックで拡大]

 会見には、東京都農林水産振興財団を管轄する東京都 産業労働局で農林水産部 部長を務める山田則人氏、東京フューチャーアグリシステムを開発するとともに遠隔農作業支援も担当した東京都農林総合研究センター 副所長の松川敦氏、NTTアグリテクノロジー 代表取締役社長の酒井大雅氏、開発を主導するNTT東日本 経営企画部 営業戦略推進室 担当課長の中西雄大氏が参加した。

東京都 産業労働局 農林水産部 部長の山田則人氏東京都農林総合研究センター 副所長の松川敦氏 左から、東京都 産業労働局 農林水産部 部長の山田則人氏、東京都農林総合研究センター 副所長の松川敦氏
NTTアグリテクノロジー 代表取締役社長の酒井大雅氏NTT東日本 経営企画部 営業戦略推進室 担当課長の中西雄大氏 左から、NTTアグリテクノロジー 代表取締役社長の酒井大雅氏、NTT東日本 経営企画部 営業戦略推進室 担当課長の中西雄大氏

 4者は、農地面積や農業従事者、生産額が年々減少している東京都において、IoT(モノのインターネット)やIT、AI(人工知能)を活用した“かせぐ農業”によって東京の農業を守るべく、東京型スマート農業プロジェクトを推進している。今回発表した「ローカル5Gを活用した遠隔農作業支援」もその一環となる。また、自治体として最大規模となる東京都での取り組みの成果により、近年課題となっている食料安全保障を実現しつつ、一般的に環境負荷が高いとされる農業での環境配慮を日本全国に広げていくことも視野に入れている。

ローカル5Gを介して東京都農林総合研究センターが遠隔で技術指導

 技術開発のための実証を行っている東京フューチャーアグリシステムは、温度/湿度/日照量/CO2濃度などの環境データを基に統合環境制御を行い、最適な光合成を実現する農業ハウスだ。作付面積は450m2で、大玉トマトの桃太郎ピースを4レーン構成で350株栽培している。2020年12月から稼働しており、3年目の現在は3作目に入っている。

実証を行っている農業ハウスの概要
実証を行っている農業ハウスの概要[クリックで拡大] 出所:NTT東日本

 同ハウス内は、4Kカメラ×5台と走行型カメラ×1台に加えて、栽培スタッフが装着するスマートグラスなどの機器を導入している。これらの機器から得られる高精細映像データは、ローカル5Gネットワークを介して東京都農林総合研究センター(東京都立川市)に伝送される。同ハウスにおけるトマト栽培は未経験のスタッフ3人で行われているが、東京都農林総合研究センターが遠隔から生育状況を把握するとともに技術指導を行うことで、未経験スタッフでも失敗のない安定栽培が行えることを実証することが目的となっている。今後、これらの仕組みがシステムとして社会実装されれば、農業従事者の減少を食い止める可能性があると見込む。

プロジェクトの全体像
プロジェクトの全体像[クリックで拡大] 出所:NTT東日本

 なお通信ネットワークにローカル5Gを利用しているのは、4K映像の複数台同時転送や、スマートグラスから得られる高画質映像の低遅延伝送、走行型カメラのリアルタイム制御などを実現するためだ。

各機器の役割とローカル5Gの必要性
各機器の役割とローカル5Gの必要性[クリックで拡大] 出所:NTT東日本

 これまで2年間の成果としては、主担当1人と補助2人、平日9〜16時の勤務で土日祝日を休日にする体制で、定植から栽培、収穫まで350株のトマト栽培に成功したという。一般的な企業勤務者と同じ週休2日制でトマト栽培を行えている点は“農業の新しい働き方”を提案するものとなっている。また、一般的なトマトのハウス栽培では10アール当たりの収量が15トンで糖度は3〜5度だが、実証を行ったハウスでは10アール当たりの収量が31トンで糖度は5〜6度だった。今後は、この高収量でおいしいトマトによって拡大する収益をIT投資の原資にするビジネスモデルを模索することが可能になるという。

遠隔農作業支援の成果(栽培視点)
遠隔農作業支援の成果(栽培視点)[クリックで拡大] 出所:NTT東日本

 遠隔農作業支援を行う側にとっても、これまで週1回の頻度で行っていたリアルでの訪問の必要がなくなるとともに、1人の指導員でより多くの生産者への指導が行えるようになるメリットがある。さらに、訪問に合わせて行っていた生育状況の確認も毎日実施でき、生育に伴う変化や異常の早期発見につなげられる。

遠隔農作業支援の成果(指導視点)
遠隔農作業支援の成果(指導視点)[クリックで拡大] 出所:NTT東日本

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