どのCADツールを選ぶべきか!? 組織とCADの立ち位置を整理して考える:3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2022(2/2 ページ)
ソリッドワークス・ジャパンは2022年11月14日、年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2022」を東京都内で開催した。ユーザー事例講演では、長野オートメーション 代表取締役社長の山浦研弥氏と、同社 設計技術部 メカ2グループの遠藤正浩氏が登壇し、「設備屋の3D CAD選定における理想と現実」をテーマに、3D CAD導入に向けた考え方や導入メリットなどについて紹介した。
CAD導入の歩みと3D CAD活用のメリット
続いて登壇した遠藤氏は、同社のこれまでのCAD導入の歩み、3D CAD導入が遅れてしまった背景、そして、その後の3D CAD導入で実感したメリットなどについて紹介した。
同社は1982年の創業当時から手描きによる設計を行ってきたが、1992年に国内メーカーの2D CADの導入に踏み切る。この当時、設計者の数は10人ほどだったという。その後、設計者の人数の増加に合わせてライセンス数を追加しつつ、2D CADを中心とした運用を続けてきた。また、その一方で、2006年には並行して、一部の顧客とのやりとりのために「SOLIDWORKS」を数ライセンス導入し、更新を続けてきたという。
「現在では、メカ設計者だけで45人ほどの所帯になったが、今から6年前の2016年に、国内メーカーのノンヒストリーベースの3D CADを導入。その環境を用いながら、実際に小型から大型のものまで、6年間で70機種ほど設計してきた。そして、2022年に入って、3DEXPERIENCE SOLIDWORKS Standardと、SOLIDWORKS Simulation Professionalを導入するに至り、現在、試験運用を開始したところだ。徐々に適用範囲を広げていき、2023年第2四半期には正式運用をスタートさせたい。6年前に一度3D CADの導入を経験しているので、立ち上げまで半年もかからないとみている」(遠藤氏)
3D CAD導入が2016年と、やや遅れてしまった理由について、遠藤氏は“最新ツールに対する経営層と現場双方の勉強不足”を挙げる。「実際、導入時の議論で出てくるのは、『いくらするんだ?』『あの会社は何を使っている?』『漫画みたいな絵で大丈夫か?』『工数は減るのか?』『これでは図面が読めなくなるぞ』といった声ばかりで、3D CADはドラフターに代わるもの、その延長線上のものという認識で捉えられていた」と遠藤氏は振り返る。その結果、議論/検討が思うように進まずに3D CAD導入が遅れ、「設計現場は何となく世の中から取り残されてしまったような感覚に陥ってしまった」(遠藤氏)という。
このような後悔を踏まえつつ、2016年以降から3D CADでの運用を開始。講演では、この間に実際に感じた3D CAD導入のメリットについても紹介した。例えば、組図(モデル)の出来上がりが早いこと、設計の途中から参加しやすいこと、変更内容の有無が分かりやすいこと、部品点数をすぐに把握できること、装置重量の計測が早いことなどを挙げ、「やはりもっと早く3D CADを導入すべきだった。まだ2D CADでの運用がメインの現場であれば、3D CADの導入によってさまざまな作業の効率化が図れるのではないか」と遠藤氏は訴える。
また、導入間もない3DEXPERIENCE SOLIDWORKS Standardの活用によって感じつつあるメリットとしては、無償のビュワーが活用できる点、拘束と合致を活用して装置の動きや干渉を確認できる点、若手や中途入社の人材の多くがSOLIDWORKSを経験しており、教育の手間が軽減できる点などを挙げる。さらに、SOLIDWORKS Simulation Professionalの活用においても、従来のベテラン設計者のカンコツ頼みから脱却し、シミュレーション活用による技術の積み上げが可能な点をメリットとして実感しているという。現在は、不具合発生時の解析、高精度、高額部品での使用をメインにシミュレーションを運用しているが、「将来的には、新規開発での適用の他、理論/経験/測定まで含めた技術者の育成にも役立てたい。また同時に、シミュレーション(CAE)利用者の普及にも取り組んでいきたい」(遠藤氏)。
最後に、今後の運用イメージ/展望として、遠藤氏は「CADデータの全社利用」「3Dデータのとことん活用」「作業自動化」「シミュレーションの積極活用」「3DEXPERIENCE SOLIDWORKSのさらなる評価」を掲げる。特に、同社の場合、新規設計の割合が80%以上あることから、バルーン上げや部品図バラシ、部品見積もりなどの作業自動化の実現に対する期待は大きいという。また、過去の実績(設計資産)にもシミュレーションを適用し、検証/評価を進めていきたい考えだ。さらに、3DEXPERIENCE SOLIDWORKSの評価では、「外部サーバ利用やリモートワークでの活用、チーム設計にも取り組みたい」(遠藤氏)との意欲を示す。
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