どのCADツールを選ぶべきか!? 組織とCADの立ち位置を整理して考える:3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2022(1/2 ページ)
ソリッドワークス・ジャパンは2022年11月14日、年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2022」を東京都内で開催した。ユーザー事例講演では、長野オートメーション 代表取締役社長の山浦研弥氏と、同社 設計技術部 メカ2グループの遠藤正浩氏が登壇し、「設備屋の3D CAD選定における理想と現実」をテーマに、3D CAD導入に向けた考え方や導入メリットなどについて紹介した。
ソリッドワークス・ジャパンは、3次元設計ソリューション「SOLIDWORKS」の年次ユーザーイベント「3DEXPERIENCE WORLD JAPAN 2022」を東京都内で開催(会期:2022年11月14日/オンライン配信:同年11月14日〜12月4日)した。
同イベントのユーザー事例講演では、長野オートメーション 代表取締役社長の山浦研弥氏と、同社 設計技術部 メカ2グループの遠藤正浩氏が登壇し、「設備屋の3D CAD選定における理想と現実」をテーマに、3D CAD導入に向けた考え方や導入メリットなどについて紹介した。
経営者の視点から考えるCAD選定、何を重視すべきか?
冒頭、山浦氏は「PCを購入する際は、基本的にWindowsかmacOSかの2択だが、CADツールの場合はそうはいかない。2D/3Dそれぞれでたくさんの種類があり、当社にとって最適なものはどれか、一体どのメーカーのCADを導入すべきかで、頭を悩ませてしまう」と述べ、世の中にCADツールがあり過ぎるが故の選択の難しさを訴える。
一方で、経営者の立場から、山浦氏は「自社の製品さえしっかりと作ることができれば、正直何でも(どのCADツールでも)いい」との本音もあるという。そこには「製品の良しあしを決める一番のポイントは、自社の付加価値となる技術が何であるかであり、CADはあくまでもツールでしかない」(山浦氏)という確固たる思いが込められている。
では、そうした思いがある中で、実際にどうやってCADツールを選定すべきか。その選定基準についても、2Dにすべきか3Dにすべきか、顧客に指定されたものにするか、機能や使いやすさで決めるか、コストがかからないものにするのかなど、さまざまあるため、どこに選択の基準を定めるかが難しい。「そこで、あらためて基本に立ち返って考えてみることにした」と山浦氏は述べる。
そして、基本に立ち返り“最初に気が付いたこと”として、山浦氏は「CADのことを過大評価し過ぎていた部分があった」と明かし、「各部門のメンバーたちが使うに当たって一番いいCADは何か? 何が最適か? どのCADが当社にとってメリットがあるか? こうした考え方自体が強過ぎた。そこで“組織とCADの立ち位置”を整理してみることにした」(山浦氏)。
その結果、生産ラインの専用機の設計/製作を手掛ける同社にとって、「全ての源泉となるのがメカ設計者(の業務)であり、そこでの考えを他の部門にどうやって伝えていくのか、その“つなぎ”の役目を果たすのがCADであるべきだ」(山浦氏)との考えに至ったという。
“つなぎ”の役割を果たすとは、各部門間のメンバー同士のコミュニケーションがとりやすい、各部門で使っている他のツールや作業のやり方とつなげやすいといったことを意味し、山浦氏自身も「そういう視点でCADの立ち位置を考えることが重要だと感じた」と振り返る。
この考え方を基本とし、同社がCAD選定のポイントとして掲げたのは、「時代への対応性」「周囲との親和性」「将来に向けた普遍性」の3点だ。
「時代への対応性」に関して、山浦氏は「当社が手掛ける設計は正直2Dでも事足りてしまうが、今、世の中で便利だといわれている3D設計に関して、設備メーカーとして『できません』ではカッコ悪い。まずは“カッコ悪くない姿”を目指そうという視点で考えた」と話す。
次の「周囲との親和性」は、「各部門のメンバーがかかわってモノづくりをする以上、メンバー同士がツールを介し、いろいろなコラボレーションやコミュニケーションが図れる環境が作れないと意味がない」(山浦氏)との考えに基づくものだ。
そして、最後の「将来に向けた普遍性」について、山浦氏は「そのCADがなくならないことが重要だ」との考えを述べ、機能面や設計者の好みを重視して選ぶことよりも、将来に向けて使い続けられるであろう「デファクトスタンダードのツールを選択すべきだ」と強調する。
以上のような選定ポイントを踏まえ、同社は2022年に「3DEXPERIENCE SOLIDWORKS Standard」と「SOLIDWORKS Simulation Professional」の導入を決定。2023年第2四半期からの正式運用開始/技術者育成に向けて、2022年第3四半期から試験運用をスタートさせている。
今回、3DEXPERIENCE SOLIDWORKS Standardの導入に踏み切った理由について、山浦氏は「新たな環境を導入するのであれば、顧客やサプライヤーも巻き込んで、社内外含めた広範なコラボレーションを可能にする高度な環境を目指したかった。そうなると、やはり“クラウドだろう”ということで、基準を定めていくつかのツールを検討していく中で、最終的に3DEXPERIENCE SOLIDWORKS Standardを採用するに至った」と話す。
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