金属3Dプリンタが日本製造業にもたらす影響とは、最新動向と今後の展望:JIMTOF2022(3/3 ページ)
2022年11月8〜13日まで東京ビッグサイトで開催された「第31回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2022)」において、近畿大学次世代基盤技術研究所 技術研究組合 次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)の京極秀樹氏が「金属積層造形技術の最新動向と今後の展開」をテーマに講演を行った。
レパートリーが増えつつある金属3Dプリンタ用材料
金属AM用の材料に関しては、従来は特にパウダーベッド方式には、アルミ樹脂シリコン(AlSi10Mg)が標準材料として使われてきた。その他にはステンレス鋼、インコネル718、64チタン(Ti64)などがメジャーな粉末材料になっている。これらの材料は、以前非常に高価だったが現在は大幅に価格が低下している。
例えば、7〜8年前であれば64チタンは1kg10万円程度だったが、現在はその3分の1程度にまで価格が下落した。他の粉末はさらに安くなっており、これが金属AMの拡大に貢献している。
軽量化の面で現在トレンドとなっている材料がアルミニウム合金だ。従来は強度があまり出なかった鋳造材料だったが、ジュラルミン系のA2024やA7075、また独エアバス社が開発した高強度で耐食性にも優れる高性能アルミニウム合金スカルマロイ(Scalmalloy)などもだんだんに登場している。
加えて、最近では純銅や銅合金、高融点のタングステンなども徐々に材料として活用できるようになってきている。この流れはPBFやBJT、MEXにおいても同じで、さまざまな方式で使用可能な材料が増えつつある。
装置の価格と人材育成が金属AM技術の課題
一方で、金属AM技術の課題としては、まず装置や材料(粉末)が高価であることが挙げられる。そのため、中小企業になかなか普及しにくい。しかし、京極氏はこの点について「製品として付加価値の高いものができれば、それは許容できるだろう」と予想する。
加えて、金属AMには高い技術力が必要という点がある。しかしそれを逆に捉えれば、自社のノウハウになるということだ。そのためには、人材育成が重要になる。
また品質が不安定であるという点については、装置の改良に加えて最適な造形状況を見るためのプロセスマップやモニタリング、もし欠陥が出そうな場合には修復をするフィードバック機能などの開発が必要になる。TRAFAMでは中小企業にも使えるようなプロセスマップを実際に開発している。
現在、金属AM技術は速いスピードで変化しており、装置のIT化や材料のスマート化も進んでいる。これらの状況を踏まえ、京極氏は「今日のお集まりの皆さまには、AMに興味を持ち、もっと深い知識をこの場で得ていただいて、とにかく日本のモノづくりに使っていただきたい」と期待を寄せた。
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