日本製鋼所子会社の品質不正は総計449件に、改ざん捏造虚偽記載のオンパレード:品質不正問題(2/2 ページ)
日本製鋼所は2022年11月14日、同年5月9日に公表した同社子会社の日本製鋼所M&Eの品質不正に関する特別調査委員会の調査報告書の内容と再発防止に向けた取り組みについて発表した。
原子力製品で不適切行為も「顧客の要求値から逸脱した製品はない」
2022年5月9日の発表時点では電力製品となるタービン、発電機用ローターシャフト、発電機用リテーニングリングの検査で不適切行為があり、その後2022年8月には鍛鋼製品の鍛造鋼管でも不適切行為が発覚している。今回は、そこから新たに原子力製品、鋳鋼製品、鋼材鋼管製品、特機製品でも不適切行為が確認された。ただし、不適切行為のあった製品全般において、現時点で品質や性能に影響する問題は確認されていないという。
なお、原子力製品の不適切行為については「いずれも製造工程において生じた突発的な事象に端を発した応急措置的な事象がほとんどであり、本来、顧客に報告、相談すれば問題とならない事象について、これを報告または相談せず糊塗したことによる不適切行為であり、顧客が要求する手続仕様からの逸脱である」「顧客の要求値から逸脱した製品がないことを個別に確認している」としており、原子力発電所の操業に影響はないとみられる。
室蘭製作所で不適切行為が生じた主な原因としては「製品部への権限集中と工程品質に関わるコンプライアンス意識の低さ」「経験・実績への過信と顧客要求・対話へのプレッシャー」「紙ベースや手作業を中心とした検査業務プロセスと慢性的な人員不足」の3つを挙げた。また、室蘭製作所のでみ不適切行為が生じた原因としては「製品部(技術者集団)を頂点・司令塔としたモノづくり」「機能分社による子会社化の歴史と従業員間の意識の壁」が背景にあったとしている。
M&Eにおける再発防止策としては「製品部への権限集中の是正による品質保証機能の独立性の強化」「職場風土の刷新」「品質管理に関する教育の強化」「検査業務のデジタル化」「品質管理に対する適正な経営資源の投入」「顧客とのコミュニケーションの充実」「品質に関わる書類・データの保管基準の改定」の7つを実施していく方針である。
日本製鋼所グループ全体としても「全社的な品質保証体制の構築」「品質コンプライアンス意識の強化・向上」「ガバナンス・内部統制の強化」を進めていく。既に2022年9月16日付で全社品質担当役員をトップとする「品質統括室」を新設した他、品質統括室が「品質方針」および「品質基本行動指針」を制定している。
また、監査室の内部監査機能を強化し、品質統括室による品質監査を含めた品質管理プロセスにおける内部統制の整備と運用の状況に関して、適宜、内部監査を実施するとともに、内部通報制度を強化するなどしていくという。
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