日野で新たな不適切事案、「故意ではなく規制に対する理解不足」:品質不正問題
国土交通省が日野自動車に対して実施している立ち入り検査の中で、排ガス/燃費試験での新たな不適切事案が発覚した。本来は排ガス測定を2回以上行うべき試験で、1回しか測定していない場面があった。これにより、正しく試験が行われなかったエンジンを搭載した車両の台数は約64万台に増える。
国土交通省が日野自動車に対して実施している立ち入り検査の中で、排ガス/燃費試験での新たな不適切事案が発覚した。本来は排ガス測定を2回以上行うべき試験で、1回しか測定していない場面があった。これにより、正しく試験が行われなかったエンジンを搭載した車両の台数は約64万台に増える。
この不適切事案が起きたのはこれまで不正が確認されていなかった排気量4l(リットル)の小型エンジン「N04C(HC-SCR)」で、日野自動車はこのエンジンを搭載する小型トラック「デュトロ」の出荷を2022年8月22日から停止した。これに伴い、出荷停止の影響は国内生産台数の6割に上る。
国交省は引き続き立ち入り検査を実施し、このエンジンの基準適合性などを確認していく。日野自動車の社内での確認では、対象のエンジンの排ガスが規制値を超過する可能性はないという。
これまでの経緯
国交省は、日野自動車が2022年8月2日に発表した排ガス/燃費試験での不正行為の報告を受けて、翌日3日から立ち入り検査を実施している。この時点では、現在生産しているエンジン14機種のうち12機種で不正行為があり、建設機械など向けを含む4機種が排ガス基準に未達だったと報告していた。また、生産を終了したエンジンの4機種がカタログの燃費値に届いていなかった。これらの不正行為に該当する車両は8月2日時点で合計で56万6941台に上った。
ポストポスト新長期規制(2016年適用の現行規制)への不適合で6万6817台がリコール対象となった。ポスト新長期規制(2009年適用)のエンジンは諸元値と実際の性能を検証中のため、リコール台数は未定となっていた。
日野自動車は外部の専門家で構成する特別調査委員会を設置しており、特別調査委員会は調査報告書を8月2日に日野自動車に送付していた。この調査報告書ではN04C(HC-SCR)の不適切事案については言及されていなかった。これは、特別調査委員会の調査対象が最初に不正の発覚したエンジン4機種だったのが理由だと日野自動車は説明している。
今回明らかになったこと
トラック・バス用エンジンの型式指定申請では、長距離耐久試験で算出した排ガス劣化補正値を国交省に提出する。長距離耐久試験は5000km、4万km、8万kmを走行した時点を測定ポイントとし、排ガス測定を2回以上行う必要がある。その結果を用いて排ガス劣化補正値を算出するが、日野自動車は一部の測定ポイントで1回しか測定していなかった。そのため、排ガス劣化補正値を計算するときに使用する各測定ポイントの測定結果も1つしかなかった。
日野自動車は「関連法規の内容を十分に理解していなかった。規定や標準類の不備、認証プロセスの適正性を確認する仕組みが不十分だったのが原因。違反行為だという認識はなかった」と説明している。
今回新たに出荷停止となるのは、2019年5月以降に日本向けに発売したデュトロだ。トヨタ自動車の「ダイナ」「トヨエース(2020年3月販売終了)」にも同じエンジンが搭載されており、現在販売しているダイナも出荷を停止する。当該エンジンを搭載した車両は2022年7月末時点で7万6694台に上り、2021年度の登録台数は2万6771台だった。
豊田社長のコメント
トヨタ自動車は2022年8月22日、代表取締役社長の豊田章男氏のコメントを発表した。「日野自動車が、新たな不正の発覚により、ステークホルダーの皆さまの期待や信頼を、再度、大きく損なう事態に至ったことは、同社の親会社としても、株主としても、極めて残念に思う。長期間にわたりエンジン認証における不正を続けてきた日野は、ステークホルダーの皆さまに認めていただけるのか問われている状況にある。この認識のもと、日野がステークホルダーの皆さまの信頼に足る企業として生まれ変われるのか注視し、見守っていく」(豊田氏)
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