日野の小型エンジンも不正が確定、中型エンジンは4万7000台のリコールに:品質不正問題
日野自動車は2022年3月25日、日本向けのエンジンで発覚した排ガスや燃費の認証試験の不正行為について、リコールなどの対応を発表した。
日野自動車は2022年3月25日、日本向けのエンジンで発覚した排ガスや燃費の認証試験の不正行為について、リコールなどの対応を発表した。
不正のあったエンジン4機種のうち、排ガス性能に問題のある中型エンジン「A05C(HC-SCR)」は、搭載モデルである中型トラック「レンジャー」のリコールを届け出た。
暫定措置として、全車両を対象にHC-SCR触媒を点検し、触媒を再生できる場合は再生作業を行う。再生が不可能、もしくは再生が完了できない場合は触媒を交換する。触媒の再生作業は対象車両の点検整備項目に追加し、定期的に実施する。恒久対策が決まり次第、改めて措置を実施する。対象となるのは、2017年4月〜2022年3月に生産した4万7000台だ。
A05C(HC-SCR)は、劣化耐久試験の途中で排ガス性能が劣化して規制値に適合しない恐れがあると認識した上で、第2マフラーを交換して試験を継続するという不正が行われた。そのため、HC-SCR触媒の再生用制御プログラムが不適切で触媒に付着した排ガス中の硫黄成分が除去されずに堆積することがある。その結果、使用期間が長くなるにつれて触媒性能が低下し、NOx(窒素酸化物)の排出値が規制を上回る恐れがある。
一連の不正を発表した2022年3月上旬の時点では、「燃費に問題があるものの不正の有無は不明」としていた小型エンジン「N04C」について、不正行為があったことも明らかにした。認証試験における燃費測定で燃費性能が基準を満たさない可能性を認識した上で、アイドリング時の燃料消費量が燃費に有利になるよう燃料流量が安定する前に測定を開始したり、複数回の測定結果から最もよい値を採用したりといった不正行為が行われていた。
N04Cを搭載する小型バス「リエッセII」とトヨタ自動車向けの「コースター」はモデル切り替えのため新規に出荷はされていないが、正しい燃費値を確認した上で税制優遇への対応などを行う。
不正のあったエンジンは、トヨタ自動車やいすゞ自動車にも供給されている。国土交通省は該当するエンジンに関して、不正に型式指定を取得したと判断し、装置型式や共通構造部型式の指定取り消しや燃費評価の取り消しを発表した。
日野自動車は外部の法律専門家や技術の知見のある有識者で構成される特別調査委員会を設置し、全容解明に向けて協力していく。
関連記事
- 日野でエンジン認証に不正、耐久試験中のマフラー交換や燃費測定装置の校正値変更
日野自動車は2022年3月4日、日本向けのエンジン4機種に関する排ガスや燃費の認証試験に不正行為があったと発表した。不正行為が行われたのは、平成28年排出ガス規制(ポスト・ポスト新長期規制)の対象となるエンジンだ。 - 三菱自/日産の軽4車種で新燃費値が確定、軽自動車税の減税対象外に
国土交通省は、三菱自動車が開発/生産する軽自動車4車種について、自動車技術総合機構でJC08モード燃費を測定し直した結果を発表した。測定試験の結果、4車種は全ての年式/グレードで、燃費がカタログに掲載されている諸元値を下回っていた。現行モデルの一部グレードは諸元値より15%低く、エコカー減税の対象外となるグレードもある。 - 日立Astemoでブレーキとサスペンションの検査に不正、2000年ごろから
日立Astemo(アステモ)は2021年12月22日、メディアなど向けに説明会を開き、取引先と決めた抜き取り試験(定期試験)がブレーキ部品とサスペンション部品で正しく行われていなかったと発表した。 - 住友ゴムが湾岸壁用防舷材で不適切検査、南アフリカのタイヤ生産でも問題発覚
住友ゴム工業は、加古川工場で生産している港湾岸壁用のゴム防舷材の検査と、南アフリカ子会社で生産している新車装着用タイヤについて、品質管理に関わる不適切事案が判明したと発表した。防舷材、タイヤとも、事案の判明後に安全性についての検証を行い問題のないことを確認しているという。 - フォルクスワーゲンの排気ガス不正、車両と違法ソフトの両方で罰金を要求
米国司法省は、Volkswagen(フォルクスワーゲン)グループのディーゼルエンジン車が排気ガス内のNOx排出量について不正を行っていた問題について民事訴訟を起こした。訴状では、ディーゼルエンジン車そのものに加えて、不正を行うのに用いた違法ソフトウェアにも罰金を科するよう求めている。 - 日産が軽自動車の開発を始めなければ、三菱自の不正は隠されたままだった
三菱自動車の燃費測定試験での不正は、日産自動車が軽自動車の開発に着手し、「デイズ」「デイズルークス」の燃費を測り直したことによって明らかになった。芋づる式に、国内市場向けの大半の車種でも不正が行われていることが判明。三菱自動車の不正は、走行抵抗値の測定と国土交通省への届け出の際に2段階で行われていた。 - スズキの不正燃費測定14車種、正しく測定すれば燃費はもっと良かった
スズキは、国の法令に沿わない不正な方法で走行抵抗値を測定した車種の燃費に関して、社内で正規に測定し直した結果を公表した。正規の走行抵抗値を用いた燃費は、不正な測定手法による走行抵抗値に基づいて発表してきたJC08モード燃費より平均で1.6%良好だった。つまり、正しく測定していればもっと良好な燃費を発表できていたことになる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.