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日産が軽自動車の開発を始めなければ、三菱自の不正は隠されたままだったエコカー技術(1/2 ページ)

三菱自動車の燃費測定試験での不正は、日産自動車が軽自動車の開発に着手し、「デイズ」「デイズルークス」の燃費を測り直したことによって明らかになった。芋づる式に、国内市場向けの大半の車種でも不正が行われていることが判明。三菱自動車の不正は、走行抵抗値の測定と国土交通省への届け出の際に2段階で行われていた。

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 三菱自動車が、「ミラージュ」「デリカ D:5」「アウトランダーPHEV」を除く全ての車種について、少なくとも2002年から、日本で認められていない手法で走行抵抗値を測定していたことが分かった。走行抵抗値は燃費測定試験を行うシャシーダイナモの設定に必要な数値の1つで、自動車メーカーがテストコースなどで測定して国土交通省に報告する。

 三菱自動車は不正な手法で走行抵抗値を測定した上に、燃費試験に有利に働く測定値を選んで国土交通省に届け出ていた。一連の不正により、軽自動車の「eKワゴン」「eKスペース」、日産自動車に供給している「デイズ」「デイズルークス」は、本来よりも5〜10%高いJC08モード燃費を公表していた格好になる。

 現在公表されている4車種のJC08モード燃費は、eKワゴン/デイズが30.4km/l、eKスペース/デイズルークスが26.2km/l。5〜10%悪化するとすれば、eKワゴン/デイズは27.3〜28.8km/l、eKスペース/デイズルークスは23.5〜24.8km/lで、ダイハツ工業の「ムーヴ」「タント」、スズキの「ワゴンR」「スペーシア」、ホンダの「N-WGN」「N-BOX」といった競合車の中で最下位になる計算だ。

測定手法と報告する数値、2つの不正

写真左から三菱自動車の中尾龍吾氏、相川哲郎氏、執行役員 開発本部長の横幕康次氏
写真左から三菱自動車の中尾龍吾氏、相川哲郎氏、執行役員 開発本部長の横幕康次氏 (クリックして拡大)

 三菱自動車が2016年4月20日に国土交通省で開いた会見で、同社 社長の相川哲郎氏は「不正は意図的に行われたものだった。なぜ不正をしてまで燃費にこだわったのか、理由については聞き取り調査を進めているところだ」と説明した。

 同社は2002年から「高速惰行法」という手法で走行抵抗値を測定していた。日本では道路運送車両法で「惰行法」という方法で走行抵抗値を測るよう定められており、三菱自動車では法令に沿わない手法が、多くの車種で10年以上にわたって用いられてきたことになる。日産自動車が惰行法でデイズ/デイズルークスの走行抵抗値を正規に測定したところ、三菱自動車が高速惰行法で測定した場合よりも7%高かったという。

 高速惰行法自体が不正確で信頼性の低い測定手法というわけではなく、米国では燃費測定時に高速惰行法で測定した走行抵抗値を用いている。欧州では日本と同様に惰行法が採用されている。

 走行抵抗値の測り方は惰行法と高速惰行法で異なる。「惰行法は一定の車速の状態からギアをニュートラルに入れて、定められた速度まで減速するのにかかる秒数を測定して算出する。これに対し、高速惰行法は一気に減速して1秒間に時速何km低下するかを基にする」(同社 副社長 品質統括部門長 開発担当の中尾龍吾氏)。

 高速惰行法は惰行法と比較して試験に要する時間が半分程度に短くなるが、高速惰行法を選んだ動機については「調査中」(同氏)としている。

 走行抵抗値の測定は、日本以外の海外市場では、その国に準拠した方法を行っていたという。

 測定手法だけでなく、国土交通省に報告した走行抵抗値にも問題があった。通常、複数測定した数値の中から中央値を選ぶ必要があるが、三菱自動車は燃費の測定で有利となるように中央値よりも低い範囲から数値を選んで報告していた。この数値は「全て実測値であり、でっちあげたものではない」(中尾氏)としている。

 自動車メーカーは国土交通省に対して走行抵抗値の全ての測定結果を提出するのではなく、定められた方法で測定した中央値を報告する必要がある。

 国土交通省は手始めに、eKワゴン/eKスペース/デイズ/デイズルークスの走行抵抗値について、正規の試験法で測定した上で速やかに届け出るよう三菱自動車に指示を出した。

 走行抵抗値を測定し直すことによって、JC08モード燃費は発売時に公表した数値から5〜10%悪化する見込みだ。エコカー減税の減税額が変わる可能性もあり、その場合は「本来の減税額との差額を返納する」(相川氏)との考えだ。燃費は悪化する見込みだが「排気ガス基準を達成していることには相違ない」(中尾氏)としている。

 軽自動車4車種を含めた一連の不正が行われた車種は保安基準を満たしているため、すぐさまリコール対象とはならない。

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