火災報知設備の製造で不正行為、承認部品の生産中止に気付かず受注し納期を優先:品質不正問題
日本フェンオールは2022年3月31日、同社製の火災報知設備の構成機器において、型式承認時に承認された部品を用いずに製造を行ったり、その発覚を防ぐため不正な手段を用いて型式適合検定に合格するなどの不正行為が判明したと発表した。2013年9月〜2020年10月までに製造した4品種、計9663台が対象となる
日本フェンオールは2022年3月31日、同社製の火災報知設備の構成機器において、型式承認時に承認された部品を用いずに製造を行ったり、その発覚を防ぐため不正な手段を用いて型式適合検定に合格するなどの不正行為が判明したと発表した。2013年9月〜2020年10月までに製造した4品種、計9663台が対象となる。
9663台の内訳は、定温式スポット型感知器(非防水型)の型式「SRU-3T」が4713台、定温式スポット型感知器(防水型)の型式「SRU-2T」が156台、中継器(火災感知器接続用)の型式「SRU-7Z」が3547台、中継器(接点監視用)の型式「SRU-8Z」が1217台。定温式スポット型感知器は、建物の天井面などに設置され、火災受信機と接続し火災時の熱を感知し警報信号を火災受信機に発信する機器だ。一方、中継器は、火災受信機と接続し、火災感知器などからの火災信号や接点信号などを受け火災受信機に送信する機器である。いずれも火災報知設備の構成機器となる。
日本フェンオールのWebサイトによれば、同社の火災報知設備は、産業設備、工場、オフィスビル、立体駐車場、海外プラントをはじめ、高度な防災性能が要求される半導体工場や原子力発電所などで採用されているという。
今回の品質不正は、型式承認時に承認された一部部品について、既にメーカーが生産を中止していたものの、その生産中止情報と実際の在庫情報が社内で共有されないまま受注を獲得したことが発端となった。しかし、納期順守を優先して、法令や社内規程などを逸脱して、承認されていない部品を用いての製造や、不正な手段を用いての型式適合検定の合格などの不正行為に至った。また、内部監査機能や部門間の連携、相互チェック機能が不十分であったことにより、これらの不正行為を社内で防止することができなかったという。
不正行為の対象となった製品については、事態が判明した後、製品本体および設置場所における試験と機能、動作、安全性に関する検証を実施した。消防法第21条の2第2項、消防法第17条など関連する規定や規格省令に基づき試験と実証を行ったところ、一部の試験の一部の試験サンプルは不適合になった。ただし、これまでの設置環境下で異常は生じておらず、また、仮に感知器や中継器に異常が発生した場合には、受信機にトラブル表示がなされるという自動試験機能が備わっている。日本フェンオールとしては「規格省令に一部不適合があるものの、現時点では機能喪失もなく、万一今後トラブル表示が発生した場合でも、適切な監視対応を行うことで使用いただけると判断した」(ニュースリリースより抜粋)としている。
品質不正のあった製品の使用を継続できると判断した一方で、消防機器を取り扱う企業としての社会的責任に鑑み、不正行為の対象となる製品の全数について代替製品への交換を進めていくとしている。
今回の品質不正については、福岡高等検察庁検事長を務めた弁護士の井上宏氏を委員長とする特別調査委員会の下で既に調査が完了しており、不正行為の原因分析や再発防止策の提言なども行われている。この提言を踏まえた上での再発防止策としては、「法令順守・コンプライアンスに関する定期的な研修などの実施」「品質保証体制の強化」「社内規程類の整備、改訂」「消防法・検定制度に関する外部講習会や社内研修会の実施」「内部監査室の役割・機能の強化」「部門間の情報共有の制度・機会の強化」「他部門による確認・承認を行う仕組みの導入」を挙げている。
また、2021年12月期決算において、今回の品質不正に関わる一連の改修見込額4億5900万円を「製品改修関連損失引当金繰入額」として特別損失に計上している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 品質不正問題にどう立ち向かうのか、抜本的解決のカギはIoTと検査自動化
2017年の製造業を取り巻く動きの中で、最もネガティブな影響を与えたのが「品質不正」の問題だろう。「日本のモノづくり」のブランド力を著しく傷つけたとされるが、2018年はこの問題にどう対応するのかという点は、全ての製造業の命題である。人手不足が加速する中、解決につながる「仕組み」や「ツール」に注目が集まる1年となる。 - 日野の小型エンジンも不正が確定、中型エンジンは4万7000台のリコールに
日野自動車は2022年3月25日、日本向けのエンジンで発覚した排ガスや燃費の認証試験の不正行為について、リコールなどの対応を発表した。 - 三菱電機の品質不正解明は道半ば、非常用電源で設計ミス判明も全数交換せず
三菱電機は2021年6月末に判明した一連の不適切検査に関する調査報告書の第2報と、不適切検査に対する経営陣の責任を評価するガバナンスレビュー委員会の報告書を公表するとともに、同年10月に発表した「品質風土」「組織風土」「ガバナンス」から成る3つの改革の取り組み状況を報告した。 - 日立Astemoでブレーキとサスペンションの検査に不正、2000年ごろから
日立Astemo(アステモ)は2021年12月22日、メディアなど向けに説明会を開き、取引先と決めた抜き取り試験(定期試験)がブレーキ部品とサスペンション部品で正しく行われていなかったと発表した。 - 防舷材不適切検査を30年続けた住友ゴム、南アのタイヤ生産不正は日本人駐在員が主導
住友ゴム工業は2021年7月に判明した品質管理に関わる不適切事案について、特別調査委員会からの調査報告書を受領した上で、今後の対応や関係者の処分などを決定したと発表した。また、品質保証体制を強化するため、同年12月15日付で社長直轄組織となる「品質保証部」を新設することも決めた。 - 住友ゴムが湾岸壁用防舷材で不適切検査、南アフリカのタイヤ生産でも問題発覚
住友ゴム工業は、加古川工場で生産している港湾岸壁用のゴム防舷材の検査と、南アフリカ子会社で生産している新車装着用タイヤについて、品質管理に関わる不適切事案が判明したと発表した。防舷材、タイヤとも、事案の判明後に安全性についての検証を行い問題のないことを確認しているという。