IoT機器でもスマホ向けeSIMが利用可能に、IIJが新技術を考案:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
IIJが、ウェアラブル機器やIoTデバイスでのeSIMの利用を容易にすることを目的に新たに考案した技術「LPA Bridge」について説明。スマートフォンで普及が進みつつあるコンシューマモデルのeSIMプロファイルのリモートプロビジョニングをIoT機器でも利用可能にする技術であり、IoT機器ビジネスの在り方を広げる可能性がある。
物理的な改造なしでコンシューマモデルのeSIMの世界観を体験できる
コンシューマモデルのeSIMプロファイルのプロビジョニングでは、eSIMプロファイルのダウンロードや書き込みを行う機能として標準化されているLPA(Local Profile Assistant)を用いる。新たに考案した技術はこのLPAについて、アクティベーションコードの入力などインタフェース部分を担当する機能となる「LPA App」と、eSIMとリモートプロビジョニング用サーバ間の通信を中継するための機能「LPA Bridge」の2つに分割した。
その上で、IoT機器にeSIMを設定するためにエンドユーザーが用いる、スマートフォンやPCなどのリッチUIを備える機器にLPA Appを、IoT機器にLPA Bridgeを実装する。eSIM設定用機器にインストールされたLPA AppとIoT機器に実装されたLPA Bridgeは、一体となってLPAに相当する機能として振る舞うため、GSMAの規定するコンシューマモデルに基づきeSIMプロファイルをデバイスで利用することが可能になるという仕組みだ。
なお、LPA Bridgeを組み込むIoT機器としては、LinuxベースでWi-FiやBluetooth、イーサネットなどのローカル通信機能を備え、キャリア通信のための汎用通信モジュールも搭載することが想定されている。LPA Bridgeのソフトウェア容量はそれほど大きくない上に、eSIMプロファイルを取り扱うときだけ利用するため、IoT機器の動作を重くするなどの影響は与えない。「既存のIoT機器に対して、物理的な改造を行うことなく、LPA Bridgeを移植するだけでコンシューマモデルのeSIMの世界観を体験できる」(IIJ MVNO事業部 ビジネス開発部 シニアエンジニアの三浦重好氏)という。
「LPA Bridge」のPoCで新たなIoT機器のビジネスモデルを模索
IIJとしては、IoT機器メーカーとの間でLPA Bridgeの活用に向けたPoCを進めることで、IoT機器のビジネスモデル変革の可能性を模索したい考えだ。これまでIoT機器メーカーが事業を展開する場合、自身が通信キャリアと回線契約を結んだ上で、エンドユーザーにIoT機器の利用や通信費用を含めたサブスクリプションによる課金を行うなどしてサービスを提供する必要があった。この場合、料金回収からビジネスモデルの立案、顧客管理/サポートなども手掛けなければならない。また、エンドユーザーから見ても、回線契約を自由に選べないなどの制約があった。
ここで、コンシューマモデルのeSIMを利用できるようになれば、エンドユーザーは自由に通信キャリアやプランを選択可能になる。IoT機器メーカーにとっても、通信料金の回収や顧客管理を行う必要がなくなり、IoT機器の開発やビジネスモデルの立案に注力できる。三浦氏は「例えば、ポータブルゲーム機の通信機能はWi-Fiの利用を前提としているが、屋外などで利用する際には、1日当たり10GBの通信容量など必要に合わせて通信キャリアやプランを選べるようになる。LPA BridgeのPoCでは、こういった新たなビジネスモデルを模索したい」と説明する。
なお、LPA Bridgeの技術は特許申請中だが「IIJで抱え込むのではなく、eSIMの可能性を広げるためにも、同業他社が希望する場合にオープンに展開していきたい」(三浦氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- いまさら聞けないeSIM入門
セルラー通信の進化や利用シーンの拡大に応じてさまざまなSIMが登場している。本稿では、SIMの中でも、最近話題となっている「eSIM」について、その概要や利点だけでなく、実際に製品に組み込むために必要な知識を紹介する。 - 任意に接続先を切り替え可能、1枚にプロファイルを複数搭載したSIMを開発
インターネットイニシアティブは、1枚のSIMで複数の携帯電話網に接続できる「マルチプロファイルSIM」を開発した。平時や障害時にユーザーが自由に接続先を切り替え、通信を確保できる。 - フルMVNOを活用したGPSトラッキングシステムをスポーツ大会に採用
インターネットイニシアティブのフルMVNOサービス「IIJモバイルサービス/タイプI」のSIMカードが、セイコーエプソンのGPSトラッキングシステムに採用された。トライアスロン大会の安全な大会運営に活用する。 - ブロックチェーンの耐改ざん性を活用したIoTセキュリティサービスを提供開始
インターネットイニシアティブは2021年11月30日、アイビーシーと協業して、ブロックチェーン技術を活用したPKIシステムを利用する「IoTトラストサービス」を提供開始すると発表した。ブロックチェーンの耐改ざん性によって、コストとセキュリティに関するPKIの課題を解消したIoTセキュリティサービスを実現している。 - HACCP対応の温度管理ソリューションが従来比でコスト半額、IIJがLoRaWANで
インターネットイニシアティブ(IIJ)は、食品の衛生管理の手法であるHACCPに基づいて、冷凍冷蔵庫や倉庫の温度を自動で監視、管理できるIoTソリューション「IIJ LoRaWANソリューション for HACCP温度管理」を開発したと発表した。従来のLTEルーターを用いたソリューションと比べてコストが半額以下で済むという。 - LoRaWAN活用で運用コストを大幅削減、IIJが水田管理用のIoTセンサーなどを開発
IIJは2020年6月10日、LoRaWANを活用するIoTセンサーなどで構築した水田の水管理システムの実証実験の報告会を開催した。LoRaWANの活用によって低コストでIoTセンサーを運用できる仕組みを実現している。