高周波スピンドルでコマの4段回しを実現、SIIと由紀精密がコラボ:JIMTOF2022
セイコーインスツル(SII)は、「第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」において、同社の工作機械用高周波スピンドルを使って金属製のコマを4段重ねで回す4段回しのデモンストレーションを披露した。
セイコーインスツル(SII)は、「第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」(2022年11月8〜13日、東京ビッグサイト)において、同社の工作機械用高周波スピンドルを使って金属製のコマを4段重ねで回す4段回しのデモンストレーションを披露した。
4段回しに用いる金属製のコマを提供したのは由紀精密だ。精密部品の設計製造を手掛ける同社だが、「全日本製造業コマ大戦」の初代王者としても知られており、3分以上回り続ける高精度のコマである「SEIMITSU COMA」もノベルティ向け商品として展開している。今回のデモ用のコマは、SEIMITSU COMAよりもさらに長く安定して回るよう設計された。
デモでは、SIIの最高回転数8万rpmの高周波スピンドル「M8H-TM」を用いて、由紀精密のコマをピックアップしてから高速回転させて細い軸の上に載せてから、その上に2番目のコマを同様に高速回転させて載せ、3番目のコマ、4番目のコマも同様に上に載せていくことで4段重ねにして4段回しを実現している。
デモのコンセプトは「抜群の安定感で『回転』するコマと、高速かつ精密に対象物を『回転』させる高周波スピンドル、それぞれが持つ『回転』の技術を高い次元で結集し困難に取り組む」である。もともと交流のあったSII 社長の内藤高弘氏と、由紀精密の親会社である由紀ホールディングス 社長の大坪正人氏の間で出た話が、両社によるプロジェクトのきっかけになったという。
デモの様子を見ると4段回しはそれほど難しくないように見えるが、高速で回転する小さなコマの回転数が落ちないうちに上に別のコマを載せて回すのは極めて難しく、それを3段、4段と積み上げるのは至難の業だったという。そこで、コマの設計、試作をはじめ、スピンドルの回転数や位置、コマを着脱する方法や、リリースする高さやタイミングなど、2022年春ごろから約半年にわたって試行錯誤を繰り返してきた。「ただ、あともう少し開発の時間があれば5段回しまで行けたかも……」(SIIの説明員)。
同説明員は「当社はセイコーグループというイメージもあってか、高周波スピンドルや研削盤を扱っていることがあまり知られていない。今回の由紀精密とのデモを通して、高精度、高剛性、低振動を特徴とするSIIの高周波スピンドルや研削盤のことを多くの方に知ってもらえれば」と述べている。
なお、4段回しデモについては、新進気鋭のクリエイティブチームmaxillaが独自の世界観で表現したPV動画「REVOLUTION FOR THE FUTURE」としてYouTubeでも公開されている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- コマ作ってるだけじゃないんです! 由紀精密が元気な理由
元気な中小企業には元気な理由がもちろんある。CI、新規業界への参入、町工場でもできるITカイゼンなどで、いまの元気な由紀精密を作った1人にみっちりとお話を聞いた。 - 「研究開発型」町工場が徹底的にこだわり抜いて開発したアナログプレーヤー
精密旋削加工を武器に、これまで培ってきたモノづくりの技術とノウハウ結集し、ピュアオーディオ向けアナログレコードプレーヤー「AP-0」を新規開発した由紀精密。その誕生の背景には、「研究開発型」町工場を標榜する同社ならではの強みと、ある1人の従業員の熱い思いがあった。 - 低毒性燃料採用の超小型衛星用スラスター開発はリアル下町ロケットだった!?
低毒性燃料を採用した超小型衛星用スラスターを開発した由紀精密と高砂電気工業。両社とも老舗の中小企業で宇宙分野への参入が比較的新しいこともあり、小説やテレビドラマで話題になった「下町ロケット」をほうふつとさせるところもある。では実際の開発は、どのようなものだったのだろうか。両社の関係者に話を聞いた。 - 中小製造業の生きる道、「研究開発型」で道を切り開く由紀精密の挑戦
2020年11月16〜27日にオンラインで開催された「第30回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2020 Online)」において、主催者セミナーとして由紀精密/由紀ホールディングス代表取締役社長の大坪正人氏が登壇。変革を続ける由紀精密の挑戦の道のりと、ファクトリーサイエンティスト養成などの今後の展望を紹介した。本稿ではその内容を紹介する。 - まさに“卓上加工”、碌々産業と由紀精密が共同開発したCNC工作機「VISAI」が始動
碌々産業と由紀精密が共同開発したデスクトップ型の超小型高精度CNC(コンピュータ数値制御)工作機械の新ブランド「VISAI」が始動し、「第27回日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2014)」で実機が公開された。 - 僕らはどうしてコマ大戦をやるのか
中小製造業を中心に盛り上がるイベント「全日本製造業コマ大戦」。その行司(審判)が、イベントに込められた思いや課題を語った。