グローバル生産は3カ月連続で前年越え、2019年比では2桁パーセント減:自動車メーカー生産動向(2/2 ページ)
2022年8月の自動車生産は、乗用車メーカー8社全ての国内生産・海外生産がプラスとなった。ただ、前年8月が東南アジアのロックダウンによる世界的な部品調達難で大幅減産した反動増によるもので、コロナ禍前の2019年8月との比較では2桁パーセント減であり、本格回復とは言い難い。
スズキ
スズキの8月のグローバル生産は、前年同月比31.0%増の25万6047台と、2カ月連続で増加した。海外生産は同32.4%増の18万4610台と、2カ月連続のプラスだった。主要拠点のインドは、半導体の搭載が少ない新興国向けの輸出モデルの生産などを増やしたことで、同40.3%増の15万9784台と大幅に増加し、2カ月連続のプラス。一方、インド以外の海外生産は同2.7%減と5カ月ぶりにマイナスとなった。
国内生産も大幅に伸長し、前年同月比27.3%増の7万1437台と4カ月連続のプラス。前年8月が半導体不足により実績が低かった反動が表れた。
ダイハツ工業
ダイハツ工業の8月のグローバル生産台数は、前年同月比34.6%増の13万5420台と3カ月連続で増加し、8月として過去最高を更新した。好調の要因は海外生産で、同57.8%増の7万6674台と13カ月連続でプラスを確保。8月生産として過去最高となった。マレーシアは前年がロックダウンの影響により8月16日まで稼働を停止していたため、同3.1倍と大幅増となった。インドネシアも同23.1%増と好調だった。
国内生産は、前年同月比12.8%増の5万8746台と6カ月ぶりにプラスへ転じた。半導体不足により滋賀第2工場で稼働停止を実施したものの、前年8月が半導体不足に加えて東南アジアからの部品調達難により相次いで稼働停止を実施していたことが要因となった。
マツダ
最も高い回復を見せたのがマツダだ。8月のグローバル生産台数は、前年同月比100.5%増の9万2424台と倍増し、3カ月連続で増加した。主力の国内生産は同118.3%増の6万1372台と3カ月連続のプラス。なお、前年8月は、大雨で本社工場と防府工場で稼働を停止した他、半導体不足、東南アジアからの部品供給難が発生。さらに中国・上海の空港で新型コロナウイルス感染者が確認されたことで貨物便による部品供給が滞るなど、相次ぐ稼働停止を余儀なくされ、国内生産台数は開示している1979年以降で最少だった。
海外生産も、前年同月比72.8%増の3万1052台と3カ月連続のプラス。メキシコは、前年8月が半導体不足による稼働停止を実施したことで同95.0%増と大幅に伸長。さらに1月から操業開始した米国工場で新型車「CX-50」を4074台生産したことで、北米トータルでは同150.2%増と高い伸びを見せ、3カ月連続のプラスだった。タイも前年に半導体不足による稼働停止が発生した反動で、同209.7%増と前年比3倍となった。一方、中国は需要に応じて生産調整を行った他、設備工事による操業停止を実施。さらに電力供給制限による稼働停止も余儀なくされた結果、同44.6%減の大幅マイナスとなり6カ月連続で減少した。中国で生産する5社で唯一の前年割れとなった。
三菱自動車
三菱自動車の8月のグローバル生産台数は、前年同月比9.2%増の8万3373台と3カ月連続で増加した。国内生産は、北米向けや国内向けの「アウトランダー」の増加などにより、同9.3%増の3万3425台と4カ月連続のプラスだった。
海外生産は、前年同月比9.1%増の4万9948台と3カ月連続のプラス。主要地域の東南アジアは、タイが同21.2%減と低迷したものの、インドネシアは同10.0%増だった。中国は前年8月がライン改修で稼働を停止していたため同329倍となり、アジアトータルでは同11.2%増となった。
スバル
SUBARU(スバル)の8月のグローバル生産台数は、前年同月比18.1%増の6万7977台と2カ月連続で前年実績を上回った。国内生産は、依然として半導体不足の影響が続いているが、前年よりは改善しており、同12.3%増の4万2125台と5カ月連続で増加した。その結果、輸出も同30.4%増と回復している。
国内以上に前年の反動が大きかったのが唯一の海外拠点である米国生産だ。半導体不足などの影響は残っているが、前年8月の落ち込みが大きかったこともあり、前年同月比29.1%増の2万5852台と大幅増を記録し、4カ月ぶりに前年実績を上回った。
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2022年7月の自動車生産は、回復の兆しが見える結果となった。半導体をはじめとした部品の供給不足による影響は依然として続いているものの、ロックダウンが解除された中国が回復したことで、国内生産などへの部品供給も改善傾向が見られた。