Markforged、Digital Metalの買収で金属3Dプリンタのポートフォリオを拡充:3Dプリンタニュース
米Markforgedの日本法人であるマークフォージド・ジャパンは、東京都内で記者説明会を開催し、2022年8月に買収したDigital Metalとのシナジーによる金属3Dプリンティング事業の強化およびその方向性について説明した。
米Markforgedの日本法人であるマークフォージド・ジャパンは2022年10月25日、東京都内で記者説明会を開催し、同年8月に買収したDigital Metal(デジタルメタル)とのシナジーによる金属3Dプリンティング事業の強化およびその方向性について説明した。
Markforgedは、3Dプリンタを活用したデジタルファクトリーの実現による“分散型モノづくり(Distributed Manufacturing)”の推進をビジョンに掲げ、世界をリードするとともに、サプライチェーンの課題解決を目指している。3Dプリンタや材料の開発だけでなく、AI(人工知能)、クラウドを活用したソフトウェアおよびプラットフォームの開発にも注力しており、ロボット/航空機/軍需/宇宙開発/自動車/医療といった、さまざまな産業領域に対してビジネスを展開する。
Markforgedの3Dプリンタは、造形方式としてFFF(Fused Filament Fabrication:熱溶解積層)方式を採用しており、補強用長繊維材料を連続的にパーツ内部に敷き詰めながら積層造形を行うことで、金属以上の非常に高い強度対重量比が得られる連続ファイバー強化(CFR:Continuous Fiber Reinforcement)技術を特長とする3Dプリンタ製品群を有する他、金属フィラメントを用いた金属3Dプリンティングシステム「Metal X」も手掛けている。
メタルFFFとメタルバインダージェット、2つのコア技術で市場を牽引
2022年8月にMarkforgedが買収したDigital Metalはスウェーデンの金属3Dプリンタメーカーで、これまでMarkforgedが培ってきた金属フィラメントによるFFF方式(メタルFFF方式)とは異なり、粉末状の金属材料にバインダー(液体結合材)を選択的に噴射しながら造形していくバインダージェット方式(メタルバインダージェット方式)を採用する金属3Dプリンタ「DMP/PRO」シリーズを有する。いずれの方式も造形後に脱脂、焼結の後処理を経ることで密度の高い強固な金属部品に仕上げるという点で共通している。この買収によって、Markforgedは金属3Dプリンティング戦略における製品ポートフォリオを強化/拡充し、試作から量産まで、金属3Dプリンタの幅広い活用ニーズに応えていく。
MarkforgedのMetal X、そしてDigital MetalのDMP/PROの位置付けについて、Markforged メタルプロダクト統括マネージャーのロス・アダムス氏は「Digital Metalの買収により、MarkforgedはメタルFFFとメタルバインダージェットの2つのコアテクノロジーを保有する企業となった。メタルFFF方式のMetal Xはエントリー向けの金属3Dプリンタで、造形サイズがそれほど大きくない部品の試作や数百個レベルの小ロット生産に対応できる。一方のメタルバインダージェット方式のDMP/PROは非常に造形スピードが速く、本当の意味で量産に対応できる3Dプリンタといえる。やり方にもよるが1万〜100万個クラスの量産が可能だ」と述べる。
使用可能な金属材料についても幅広く、Metal Xの場合は、SUS630(ステンレス鋼)やSKD61(合金工具鋼)、インコネル625(ニッケル合金)、純銅など6種類の金属フィラメントを展開し、例えば、機能試作やロボットアームのエンドツール、カスタムパーツ、ブラケットなどの造形に用いられている。また、DMP/PROについてもチタン、ステンレス、インコネル、銅など9種類の材料に対応し、自動車や医療分野などの高精度/高品質が要求される部品製造に活用されているという。
マークフォージド・ジャパン 代表取締役社長のトーマス・パン氏は「MarkforgedはMetal Xという非常に柔軟性の高い金属3Dプリンティング技術を有していたが、量産やスピードという面で足りていない部分もあった。そこに、メタルバインダージェット方式の製品ラインアップが加わったことは非常に大きな意味を持つ。今回の買収によって金属3Dプリンタによる量産も可能となり、われわれが掲げる分散型モノづくりの実現をさらに前進できると期待している」と語る。
参考導入価格については、Metal Xが装置本体と後処理装置のセットで2000〜3000万円の価格帯、DMP/PROが装置本体と後処理装置、付帯設備などを含み1億円程度になるという。
また、Markforgedの3Dプリンタは造形の設定や開始、管理などに統合プラットフォーム「Eiger」を用いているが、現時点ではDMP/PROをサポートする計画はなく、Digital Metalがこれまで提供してきたソフトウェアをそのまま利用するとのことだ。
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