ニュース
金属アレルギー患者でも使用できる歯科矯正用ワイヤを開発:医療技術ニュース
東北大学は、歯科の矯正用スチールワイヤに窒化チタンをコーティングすることで、金属溶出を抑制できることを発見した。金属アレルギー患者にも対応する矯正用ワイヤに使用できる可能性がある。
東北大学は2022年10月12日、歯科の矯正用スチールワイヤに窒化チタン(TiN)をコーティングすることで、金属溶出を抑制することを発見したと発表した。セラミックスのTiNは、生体親和性に優れ、金属アレルギー患者にも対応する矯正用ワイヤに使用できる可能性がある。
イオンプレーティング法によりTiNをコーティングしたスチールワイヤを強酸に浸したところ、スチールワイヤの材料金属であるニッケル、コバルトの溶出量は抑制された。また、コーティングが剥がれる原因と考えられる、歯ブラシによるブラッシングを試験したところ、2万回磨いてもコーティングが剥がれないことが確認できた。
ただし、歯科矯正時のワイヤ調節のために必要な曲げについての試験では、ワイヤを曲げる角度が大きくなるにつれて金属溶出が認められたため、さらなる改良は必要となる。
鉛合金のスチールワイヤは機械的特性に優れ、矯正用ワイヤとして最も多く使用されている。しかし近年は、ニッケルやコバルトなどを原因とする金属アレルギー患者が増えており、金属アレルギーを持つ患者の矯正治療には課題があった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 少量の血液から、アルツハイマー病の血液バイオマーカーを検出する技術を開発
北海道大学は、少量の血液から、アミロイドβが結合したエクソソームを1個単位で識別、検出する高感度蛍光検出技術を開発した。モデルマウスにおいて、アミロイドβ結合エクソソームの加齢増加を確認した。 - 人間の笑いに対して適切に笑い返す会話ロボットを開発
京都大学は、相手の発話の音声的な特徴に基づき、人が笑ったときに適切に笑い返せる会話AIを搭載したロボットを開発した。同調笑いを適切に返すことで、ロボットによる共感やロボットの人間らしさが向上することが分かった。 - 運動意図に応じた運動をアシストする、手指運動リハビリシステム発売
メルティンMMIと住友ファーマは、共同開発した「MELTz手指運動リハビリテーションシステム」を発売した。生体信号処理技術と生体模倣ロボット技術を組み合わせた、手指運動機能のリハビリテーション支援システムとなる。 - 大統領令で加速する米国のバイオエコノミーR&Dとデータ保護
米国では、本連載第44回で取り上げたAI、第80回で取り上げたサイバーセキュリティなどのように、大統領令を起点として、省庁横断的なトップダウン型で、一気に科学技術支援策を推進しようとするケースが多々見られる。今注目を集めているのはバイオエコノミーだ。 - 心拍や呼吸などの微細な振動を高精度に検出する非接触センシングシステム
京セラは、低ノイズのミリ波センサーを活用し、非接触で心拍や呼吸変動、機械、建造物などの微細な振動を検知、抽出する「非接触インテリジェントミリ波センシングシステム」を開発した。 - 幸せホルモンのオキシトシンを生体の脳内で検出する蛍光センサーを開発
大阪大学は、神経ペプチドの1種で、幸せホルモンとも呼ばれるオキシトシンを高感度に検出する蛍光オキシトシンセンサーを開発した。同センサーを用いて、生きたマウスの脳内からオキシトシン動態を測定することに成功した。