日立が製造業DXを推進するIoT基盤構築サービスを提供、立ち上げ期間を半減:製造ITニュース
日立製作所は、企業におけるDXの構想策定から、収集したIoTデータを用途に合わせて利用するための迅速なデータ利活用基盤の設計と構築、セキュアな運用までを可能にする「Hitachi IoT Platform for industry クラウドサービス」について、2022年11月1日から提供を始めると発表した。
日立製作所(以下、日立)は2022年10月25日、企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の構想策定から、収集したIoT(モノのインターネット)データを用途に合わせて利用するための迅速なデータ利活用基盤の設計と構築、セキュアな運用までを可能にする「Hitachi IoT Platform for industry クラウドサービス」について、同年11月1日から提供を始めると発表した。まずは、製造業や社会インフラを手掛ける企業向けに、モノづくりなどの「製造DX」、研究開発などの「研究DX」、カーボンニュートラル対応などの「環境DX」、サプライチェーンの安定化などの「調達DX」をワンストップで支援する。価格は個別見積もりとしており、2024年度末までに100社の顧客への導入を目指す。
Hitachi IoT Platform for industry クラウドサービスは、日立のデジタルソリューション群「Lumada」の一つとして、さまざまな企業との協創を通じて蓄積してきたIoT基盤を構築するためのノウハウや知見をサービスとして提供するものだ。データドリブンな企業経営に必要不可欠なデータの収集から蓄積/管理、継続的な活用までのデータマネジメントを推進するための基本機能をサービスプラットフォーム化しており、日立がクラウド上に構築した高度なセキュリティを施したフルマネージドのインフラを基本サービスとしつつ、その上で顧客にとって最適なIoT基盤を構築するのに必要なサービスをメニュー化し自由に選択できるようにしている。
さらに、IoT基盤構築の基本方針となるDX戦略や業務構造の策定、その実装に必要なデータモデルの構築などについても、日立が協創案件で培ってきた数多くのユースケースに基づいて支援するプロフェッショナルサービスも提供する。
DX推進がうまくいなかい4つの原因
製造業をはじめ国内企業はDXに取り組むようになっているが、思うように成果が出ないことが課題になっている。DX推進がうまくいなかい原因としては「DXノウハウ不足」「投資対効果の懸念」「運用人員不足」「セキュリティの懸念」の4つが挙げられる。これまで日立は、IoT基盤の構築を中核とした顧客のDX推進を支援する際に、生産現場デジタルツイン化ソリューション「IoTコンパス」などを核に、顧客ごとの要望や事情に合わせてSIを行って、先述した4つ原因を解決するのが一般的だった。
今回発表したHitachi IoT Platform for industry クラウドサービスは、これまでのSIのノウハウと知見を集積し、製造や研究、環境、調達といった目的に合わせてDXを早期に実現するためサービス化したものだ。まず、基本サービスとして、日立がパブリッククラウド上に構築したインフラをフルマネージドで提供する。このインフラのセキュリティについては、米国国防省向けシステムのセキュリティ機能要件であるSCCA(Secure Cloud Computing Architecture)が推奨する構造を取り入れるなど、パブリッククラウド上で安心してデータを蓄積/管理できるようになっている。フルマネージドなインフラサービスで「運用人員不足」を、インフラの高度なセキュリティ機能で「セキュリティの懸念」を解決できるというわけだ。
IoT基盤の構築では、データの「収集」「蓄積」「加工」「見える化」「API提供」などの基本機能ごとに、豊富かつ選択可能なサービスメニューを用意した。これによって、IoT基盤構築の初期の目標となるPoC(概念実証)の立ち上げを早期に行えるようになり、適用範囲を拡大した本番環境の稼働に向けた拡張も容易になるという。顧客の既存システムを生かしながら、新規の機能部分だけをセミオーダー式でミニマムに開発することもできる。これによって「投資対効果の懸念」にも対応できる。
「DXノウハウ不足」に対してはプロフェッショナルサービスで支援する構えだ。日立には、製造や研究、環境、調達といってDX推進のそれぞれの目的に対して、収集したIoTデータを4M(huMan、Machine、Material、Method)データとして分類し、デジタルツイン上で連携させるためのデータモデルを構築するノウハウや知見があり、これに加えてDX構想の策定やデータマネジメント推進までサポートできる。
Hitachi IoT Platform for industry クラウドサービスにより。IoT基盤の立ち上げ期間を半減できるとする。例えば、これまでPoCの立ち上げで1年、本番環境の稼働で1年、合計2年かかっていたところを、それぞれ半年で合計1年で済むという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 日立大みか事業所は地域全体でCO2削減に挑む、先進工場が目指す脱炭素の在り方
日立製作所の大みか事業所は2022年6月、「大みかグリーンネットワーク」という構想を発表した。注目したいのが、大みか事業所を中心にサプライチェーン企業や地域企業などを巻き込み、「地域社会全体での成長可能な脱炭素」を目指すというコンセプトだ。スコープ3の対応に頭を悩ませる製造業も多いが、同事業所ではどのように達成を目指すのか。 - 工場全体に高度なトレーサビリティーとDXをもたらすIoT基盤を構築
日立製作所は、サントリー食品インターナショナルの新工場に、高度なトレーサビリティーと、DXによる工場経営や働き方改革をもたらすIoT基盤を構築した。工場全体の機器、品質管理、出荷などさまざまな情報を統合できる。 - いまさら聞けない「デジタルツイン」
デジタルツインというキーワードを、IoT活用やデジタル変革(DX)の流れの中で耳にする機会が多くなった。デジタルツインとは何か? について「5分」で理解できるよう簡単に分かりやすく解説する。 - デジタルツインがあれば、損失10億円のリコールを避けられた
製造業に大きな進歩をもたらすデジタルツインの姿について事例から学ぶ本連載。第1回は、製品開発段階で求められるデジタルツインに着目する。 - デジタルツインによる生産準備「バーチャルコミッション」とは
製造業に大きな進歩をもたらすデジタルツインの姿について事例から学ぶ本連載。第2回は、生産準備工程におけるデジタルツインに着目する。 - デジタルツインを「モノづくり」と「コトづくり」に生かす
製造業に大きな進歩をもたらすデジタルツインの姿について事例から学ぶ本連載。第3回は、生産やサービスの局面におけるデジタルツインについて説明する。