オムロンが機器組み込み用カラーセンサーを開発、ダイキンと油圧装置のCBMで協業:組み込み開発ニュース
オムロンは、新たに開発した機器組み込み用カラーセンサー「B5WC」を発表。2018年4月からダイキン工業 油機事業部との協業で開発を進めてきた、工作機械などの動力源となる油圧装置に用いられる油の劣化具合を色で捉えてCBM(状態基準保全)や遠隔監視を実現する用途を主軸に事業展開を進める方針。
オムロンは2022年10月19日、オンラインで会見を開き、新たに開発した機器組み込み用カラーセンサー「B5WC」を同年11月1日に発売すると発表した。2018年4月からダイキン工業 油機事業部との協業で開発を進めてきた、工作機械などの動力源となる油圧装置に用いられる油の劣化具合を色で捉えてCBM(Condition Based Maintenance:状態基準保全)や遠隔監視を実現する用途を主軸に事業展開を進める方針。この他にも、製品の色そのものを検知して機器の動作と連携する用途も提案していきたい考え。価格はオープンとしており非公開。グローバルでの売上高目標は発売から3年間累計で5億円に設定した。
B5WCは、光源となる白色LEDから照射した光に対する検出物からの反射光を受光して赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に分離し、I2Cインタフェースを用いてRGB各色のデータを電圧値で出力する。検出物の色によってRGB各色の比率は固有の値になるので、カラーセンサーとして色を検知できるような仕組みになっている。
機器組み込み用ということで、外形寸法は幅40×奥行き8.4×高さ15.9mm、質量3.4gと小型軽量に仕上げている。「これまでFA用のカラーセンサーは当社の制御機器事業の製品を含めて幾つかあったものの、サイズが大きく高価なことが課題になっていた。B5WCは、FA用カラーセンサーと比べてはるかに小さく価格も大幅に低減できている。機器組み込み用のカラーセンサーを量産しているのは業界全体を見ても他に例がないのではないか」(オムロン)という。
主な仕様は以下の通り。検出距離は40mm、電源電圧はDC5V±5%、消費電力は18mA以下、サンプリング周期は1ms、動作温度範囲はー10〜65℃。色検知の分解能としては、油の劣化進行度を示すASTMカラースタンダードは0.5(最も透明に近い)〜8.0(最も黒色に近いに)まで0.5刻みで判定されるが、それぞれの違いを判別可能だとしている。
ダイキン工業「エコリッチR」のオプションに採用
オムロンがB5WCの主な用途として想定している油圧装置の油の劣化具合をモニタリングする用途は、ダイキン工業 油機事業部との協業の成果となっている。実際に、同社のハイブリッド油圧システム「エコリッチR」において、油圧タンクの横にカラーセンサーを設置して機器ごとの油劣化具合を色で定量的に把握し、アルゴリズムに基づいて油の交換アラートを出す仕組みをオプションとして提供する準備を進めている。B5WCとエコリッチRのオプションによるアラートを組み合わせれば、エコリッチRを組み込む産業機械のメーカーは、CBMや遠隔監視の機能を顧客に提供できるようになる。
他の産業機械向けでも、アームロボットやエレベーターなどの駆動部に用いられる潤滑油の色から劣化を定量的に把握するニーズが出ている。ただし、液体の色検出では、照射光が液体を透過した後の反射光を用いる必要があるため、乳白色のグリスなど透明でない油の劣化判定に用いるのは難しいという。
製品そのものの色を検知する用途の例として挙げたのがドリンクサーバだ。カップの色を識別して対応するドリンクを提供することで、機器の多機能化や業務の自動化に貢献するという。例えば、紫色のカップはグレープジュース、赤色のカップはストロベリージュースなどだ。この他にも、生産ラインの物体検出にも活用できる可能性があるとした。
なお、ダイキン工業は「第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」(2022年11月8〜13日、東京ビッグサイト)に出展し、B5WCを活用したアプリケーションを展示する予定だ。
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