ヤマハが新たに無人ヘリとドローン開発、適材適所で農業の省人化推進:スマートアグリ(2/2 ページ)
ヤマハ発動機は2022年10月6日、東京都内およびオンラインで記者会見を開き、主に農業用途向けの産業用マルチローター「YMR-II」および産業用無人ヘリコプター「FAZER R AP」を開発したと発表した。
無人ヘリは自動航行機能が大幅向上
FAZER R APは新型自動飛行用アプリケーション「agFMS-IIh」を用いた自動航行により、高精度な直線長距離散布による大規模ほ場での散布に対応する。agFMS-IImの他、自動飛行時にボタン操作で作動する自動離着陸機能や機体に接近することなく適正な距離を保った状態で飛行開始できるリモートエンジンスタートを備えている。
燃料はレギュラーガソリンで、タンク容量は5.8l(リットル)。液剤で32l、粒剤で30kgの積載が最大で可能となっている。建物、電線、電柱などの障害物を15m手前で検知して、停止する障害物検知レーダーを標準で搭載している。FAZER R APは2023年春以降の販売、価格提示を予定している。
2022年6月に航空法が改正され、100g以上の無人航空機を飛行させる場合、機体登録と識別情報を電波で遠隔発信するリモートIDの搭載が義務化されたが、両製品とも標準で対応している。同年12月に行われる無人航空機の機体認証などに関する改正にも対応する方向という。
病害虫などの予防、駆除する防除剤の散布には有人ヘリコプターや無人ヘリコプターが従来使われてきたが、ドローンの使用も増えてきているという。
ヤマハ発動機 UMS事業推進部長の倉石晃氏は「大面積の散布に無人ヘリが使われているが、小さい面積をピンポイントで適時に防除できるドローンが普及している。今回、FAZER R APは今までにない自動化を採用した無人ヘリコプターであり、YMR-IIには求められている情報セキュリティ、汎用性の機能を強化した。適材適所に使うことで、農薬や肥料の使用を抑え、コスト低減にもつながる」と語る。
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