欧州と相互接続可能なデータ連携基盤構築、OT領域でオムロンと共創:脱炭素
NTTコミュニケーションズはオムロンと製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた共創を開始すると発表した。NTTコミュニケーションズが得意とするIT領域と、オムロンが得意とするOT領域の技術を合わせて、サプライチェーンにおけるCO2排出量などのデータ連携基盤の構築を目指す。
NTTコミュニケーションズは2022年9月28日、オンラインで記者会見を開き、オムロンと製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた共創を同年10月3日から開始すると発表した。NTTコミュニケーションズが得意とするIT領域と、オムロンが得意とするOT領域の技術を合わせて、サプライチェーンにおけるCO2排出量などのデータ連携基盤の構築を目指す。
欧州で進む企業間データ連携基盤作り
現在、欧州では「GAIA-X」と呼ばれる自律分散型の企業間データ連携基盤の構築が進んでいる。製品ライフサイクルにおけるCO2排出量や廃棄、リサイクルなどに関するデータを、サプライチェーンを構成する企業が相互接続して連携する仕組みとなる。GAIA-Xの整備に向けて2027年までに官民で1兆円を超える資金が投じられる見通しだ。
その自動車産業版として、開発から製造、販売、廃棄までのプロセスにおけるCO2排出量データなどを連携する「Catena-X」が、2023年の初頭にもサービス開始される予定になっている。ドイツ企業を中心に開発を進めており、旭化成やデンソー、NTTコミュニケーションズも参画している。
そういったデータ流通に関して近年、重視されているのがデータ主権の確保だ。データ主権とは、データ提供者自身がデータの提供条件を管理できるようにする考え方を言う。「データ提供者が持っているデータ、例えば工場なら生産に関するデータを、いつ誰がどこから何の目的で利用できるのかをシステムで規定して管理し、権利を守れるようにする考え方だ」(NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートファクトリー推進室 担当部長 エバンジェリストの境野哲氏)。
Catena-Xなどで日本企業がデータを流通させる際には、国内のデータが欧州の規定で管理されることになる。そこでNTTコミュニケーションズでは日本の規定でデータ管理でき、かつCatena-Xなどと相互接続できるデータ基盤の開発を目指している。
日本版GAIA-XにおけるITとOTの連携
今回、NTTコミュニケーションズはオムロンと共に、NTTコミュニケーションズが開発を進めているデータ連携基盤と工場やプラントなどの制御システムの接続を進めていく。「セキュリティとデータ主権の考え方を工場のインフラに適用しようとすると、制御システムならではの対策が必要になり、われわれだけでは実現できない。IT領域とOT領域を安全につないでデータを最適な場所で分析し、現場にフィードバックをして、生産を自動最適化して環境負荷を最小化させる自律的な仕組みを構築したい」(境野氏)。
オムロンは2030年を見据えた長期ビジョン「Shaping the Future 2030」を掲げ、その中でカーボンニュートラルの実現、デジタル化社会の実現、健康寿命の延伸という大きな3つの社会的課題を設定している。主力の制御機器事業においては、5つの分野における持続可能な社会を支えるモノづくりの高度化への貢献を通して、それら社会的課題の解決を図る。
「IT領域とOT領域をつなぐコントローラーは既に商品化しており、現場を動かすソリューションは提供してきた。ただ、製造現場の状態をデータベースにつなげるだけで止まっており、データ基盤につないだり、さらにはサンプライチェーン全体を通じたソリューションの提供までには至っていない。そういったソリューションの知見が足りないため、NTTコミュニケーションズの力を借りたい」(オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 コントローラ事業部 事業部長の生田靖人氏)
2024年には新たな欧州バッテリー規則が一部施行される予定となっている。「Catena-Xのスタート時にはまずIT領域の連携を開始したい。欧州バッテリー規則の施行までに、OT領域との連携も実現させたい」(境野氏)。
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