量子計算技術で配送作業の計画時間を10分の1に、NECが東京23区で本格導入予定:量子コンピュータ
NECは2022年9月9日、ICT機器の保守サービスを提供するNECフィールディングと共同で、量子コンピューティング技術を活用した保守部品の配送計画立案システムを構築したと発表した。2022年10月から東京23区内での保守部品配送を対象に本格導入する。
NECは2022年9月9日、ICT機器の保守サービスを提供するNECフィールディングと共同で、量子コンピューティング技術を活用した保守部品の配送計画立案システムを構築したことを発表した。2022年10月から東京23区内での保守部品配送を対象に導入する。
NECのグループ会社であるNECフィールディングは、NECや他社製のICT機器、非ICT機器が故障した際に、カスタマーエンジニアが顧客現場に行き保守作業を行うサービスを提供している。この時、カスタマーエンジニアのスキルや到着時間を考慮して出動計画を作成し、交通事情を加味しながらパーツセンターから保守部品の配送を行っているという。
ただ、保守作業には緊急対応や定期保守、時間指定の対応など多種多様なオーダーが存在する。さらに、配送エリアや部品の種類、サイズ、トラック/バイクなど配送手段の組み合わせを膨大な候補の中から考える必要がある。このため、配送計画の立案作業に時間がかかっており、さらに配送コストを抑えた効率的な配送計画を立案する人材も限られるといった課題を抱えていた。
NECとNECフィールディングはこれらの課題解決に向けて、量子コンピューティング技術で大規模な組み合わせ問題の超高速処理を実現する「NEC Vector Annealingサービス」を活用する実証実験を2022年2月から実施してきた。その結果、量子コンピューティング技術を使い立案した配送計画が熟練の作業者と同等程度の内容に仕上がることが確認できたという。
そのため今回、約50件の翌日分の配送計画に適用するシステムを開発して、本格導入を進めることにした。毎日約2時間かけて行う保守部品の配送計画立案作業を、約12分と10分の1に短縮する。適用する業務範囲や対象エリアの拡大を通じて、配送車の台数削減や距離の短縮化を図っていく。これによって配送コストを3割程度削減できる見込みだ。
両社は今後、保守部品の配送計画の立案に関わる作業者の負荷軽減に加え、配送効率の向上によるコスト削減やCO2排出量の低減を目指していくという。
関連記事
- 約1000万倍の高速化に成功、独自アルゴリズム搭載の量子AIシミュレーター
SCSKは、独自の量子AIアルゴリズムを搭載した、量子回路シミュレーターを開発した。機械学習データ400件に対する演算を5.8ミリ秒で処理し、従来に比べて約1000万倍の高速化を可能にした。 - 量子コンピュータの力を古典コンピュータで引き出す、NVIDIAが統合基盤を発表
NVIDIAは、古典コンピュータと量子コンピュータ、双方の計算処理をシームレスに統合できるハイブリッドコンピューティングプラットフォーム「NVIDIA Quantum Optimized Device Architecture(QODA)」を発表した。 - 「誤り訂正」なくても実用化可能か、IBMの量子コンピュータ開発ロードマップ
日本IBMは2022年6月29日、同社が同年5月に公開した量子コンピュータの開発ロードマップに関するオンライン説明会を開催した。ハードウェアだけでなく、ソフトウェアや周辺機器なども併せて開発を進め、量子コンピュータの性能向上を図っていくとした。 - 将来の量子コンピュータ活用も視野に、生産計画の最適化でモノづくりに革新を
Fixstars Amplifyは「日本ものづくりワールド 2022」で、量子コンピュータなどによって組み合わせ最適化問題を解くためのアプリケーション開発サービス「AMPLIFY SDK」を活用した、製造業向けの提案内容などを紹介した。 - 量子技術関連の世界市場規模、2025年に3兆4618億円と予測
矢野経済研究所は、量子技術関連の技術、サービス世界市場に関する調査結果を発表した。同市場の2025年の世界市場規模は、3兆4618億円になると予測している。 - IBMは最大数十万量子ビットの量子コンピューティング実現目指す
IBMは、大規模かつ実用的な量子コンピューティングの実現に向け、新たな開発ロードマップを公開した。量子システムの量子ビット数を最大数十万ビットに拡大するため、個々が接続可能なモジュール式アーキテクチャの開発を計画する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.