eAxleを小型化、ジェイテクトが加工技術を生かして超小型デフを開発:電動化
ジェイテクトは2022年8月31日、eAxleの小型化や出力密度向上に貢献するディファレンシャルギア(デフ)「JTEKT Ultra Compact Diff.(JUCD)」を開発したと発表した。高出力の4WD車やスポーツモデル向けに実績のあるトルセンLSDの技術を歯車設計や加工技術によって進化させ、デフを超小型化した。
ジェイテクトは2022年8月31日、eAxleの小型化や出力密度向上に貢献するディファレンシャルギア(デフ)「JTEKT Ultra Compact Diff.(JUCD)」を開発したと発表した。
高出力の4WD車やスポーツモデル向けに実績のあるトルセンLSDの技術を歯車設計や加工技術によって進化させ、デフを超小型化した。自動車メーカーやeAxleを手掛けるサプライヤーに向けて広く提案していく。
eAxleは、モーターにインバーターとデフを含む減速機を一体化した電動駆動システムだ。電気自動車(EV)に搭載した場合、出力は単体で100k〜200kWが主力レンジになるという。また、EVは4WDモデルの需要が高く、4WD比率はCセグメントで29%、Dセグメントで54%、Eセグメントで68%となる見通し。4WDの需要やバッテリー容量が拡大する傾向を踏まえ、eAxleの小型化や出力密度向上に対するニーズが高まるとジェイテクトは見込む。
eAxleを構成するモーターからデフまでの流れをみると、3軸式や2軸式、ステップドピニオン遊星など入出力の配置に複数の方式がある。いずれの方式も体格の面では一長一短で、小型化と出力密度の向上が求められており、デフの改善で貢献できるとみている。
JUCDはトルセンタイプDの複合プラネットギア(歯車諸元が左右で異なるタイプ)などの差動ギア構造を維持しながら、歯車の小モジュール化などによりデフの体格を小さく抑えた。一般的なベベルギア式とは異なり、小径のプラネットギアの外径をハウジングの支持穴で直接支持する構造だ。ベベルギア式と比べて部品点数は増えるが、デフの小型化によってeAxleの体積削減やバッテリーの搭載量の拡大など車両全体でのメリットを打ち出して提案していく。
JUCDでデフの高強度化もしくはトルク密度の向上を図るため、差動ギア構造を一新した。具体的には、ヘリカルギア化することでかみ合い率を向上するとともに、大径でのかみ合い歯幅を増やし、出力軸径も拡大した。さらに、プラネットギアとサイドギアのかみ合い数を1.5〜3倍に増やすことで、デフの強度を大幅に向上した。
また、差動ギアのかみ合い歯幅と出力ギアのかみ合い数を、ベベルギア式デフと比較して増やしている。デフのハウジングケースと、出力ギア間のトルク伝達を行うピニオンギアの差動摺動支持部の各負荷をベベルギア式デフよりも低減した。これにより各ギアのかみ合い部の負荷や、プラネットギアの指示部摺動面の負荷を下げ、差動ギア機能部の容積が同等ならデフ強度は2倍以上に向上でき、デフ強度が同等なら必要容積を半分以下に抑えてトルク密度を高められる。
プラネットギアセットは共通の仕様とし、出力ギア歯数やデフ外径の大きさ、プラネットギアセットの数を選択することで、デフの容積増を抑制しながら幅広いトルク容量に対応できるシリーズとして展開する。
JUCDは差動制限特性がマイルドで、滑りやすい路面での発進や登坂でのタイヤスリップ時に介入する摩擦ブレーキの負荷を軽減できる。また、減速時の車両の挙動を安定化させることで、回生ブレーキの適用領域拡大にも貢献する。これらの効果で電力消費の改善も期待できるとしている。さらに、差動制限特性が直進安定性を高めることから、ステアリングを微調整する操作を低減し、ドライバーの疲労低減や乗り心地の向上が図れる。
ギアイノベーションセンターで社内の強みを結集
ジェイテクトグループは2021年11月にギアイノベーションセンター(愛知県刈谷市、ジェイテクト刈谷工場内)を開設し、高性能歯車を超短期で提案する体制を整えた。自動車部品や軸受、工作機械で培った解析技術やモノづくりを融合した独自の3D歯面修整加工技術によって、厳しい使用条件下でも歯車のかみ合いを正常化できるのを強みとしている。
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