「bZ4X」の車載充電器は回路シングル化で小型軽量に、DC-DCコンバーターと一体化:電動化
豊田自動織機が車載充電器とDC-DCコンバーターを一体化した小型軽量ユニットを開発。車載充電器の小型化を果たすとともにDC-DCコンバーターと一体化することにより、従来と比べて体積で23%、重量で17%の小型軽量化に成功した。新型EVであるトヨタ自動車の「bZ4X」に採用されている。
豊田自動織機は2022年4月13日、オンラインで会見を開き、車載充電器とDC-DCコンバーターを一体化した小型軽量ユニットを開発したと発表した。回路のシングル化やSiCダイオードの採用、ケース内に構成した水路の両面を用いた冷却機構によって車載充電器の小型化を果たすとともに、DC-DCコンバーターと一体化することにより、これまで車載充電器とDC-DCコンバーターを別体で搭載する場合と比べて体積で23%、重量で17%の小型軽量化に成功。新型EV(電気自動車)であるトヨタ自動車の「bZ4X」向けにデンソーが納入するESU(Electricity Supply Unit)の中核部品として採用された。
今回開発した一体ユニットの仕様は、車載充電器が最大出力6.6kW、定格入力電圧AC100〜240V、DC-DCコンバーターが出力電圧12V、出力電力2.1kW。体積は16.9l(リットル)、重量は17kgとなっている。
豊田自動織機は、主にトヨタ自動車のHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)向けを中心に車載充電器やDC-DCコンバーターを納入してきた。
1990年発表のニッケル水素電池を搭載する「RAV4 EV」向けの充電スタンドの技術をベースに開発した車載充電器は、2010年発売の「プリウスPHV」を皮切りに、2代目プリウスPHVや「RAV4 PHV」などのPHEV、レクサスブランド初のEV「UX 300e」などに採用されている。累計40万台を出荷しており、2020年度の月間生産台数は8000台で、トヨタ自動車のPHEVやEVなど車載充電器搭載車両のシェアは100%となっている。
一方、DC-DCコンバーターは1999年発売の初代「プリウス」向けから生産を開始し、トヨタ自動車のHEVの市場拡大に合わせて世代ごとに小型化、低コスト化、大電流化などに対応してきた。累計1511万台を出荷しており、2020年度の月間生産台数は11万4000台で、世界シェアは29%でトップに立っている。
3.3kWの回路2つから6.6kWの回路1つにシングル化
今回の一体ユニットの開発では、車載充電器で大幅な小型軽量化を果たしつつ、DC-DCコンバーターについてはEVに最適化すべくバッテリーからの入力電圧を1.5〜2倍に拡大するなどの性能向上を果たした上で、車載充電器を下方、DC-DCコンバーターを上方に置く形で一体化した。単体製品では最新となる、RAV4 PHV/UX 300e向けの車載充電器と、新型「ノア/ヴォクシー」向けのDC-DCコンバーターを別体で搭載する場合と比べて、一体ユニットの体積は23%減、重量は17%減となっている。
車載充電器については、これまで3.3kWの回路を2つつなげることで最大出力6.6kWを実現していたところを、6.6kWの回路1つにシングル化することで小型軽量化につなげた。しかし、6.6kWの回路の構成部品を通過する電力は従来比で2倍となり、電力変換回路のサージ電圧や発熱が大きくなってしまうという問題が発生する。そこで、サージ電圧を抑制するために豊田自動織機として初めてSiC(シリコンカーバイド)ダイオードを採用した。発熱に対しては、ケース内に構成した水路の両面に部品を配置することで放熱性能を向上して対応した。
さらに、面実装部品で構成していた車載充電器の制御回路の一部を内製制御ICに代替することで大幅に部品点数の削減し基板も小型化した。該当回路の占有面積は、1300mm2から200mm2と85%削減されている。充電機能のための電力変換を行うパワーモジュールについても、より小さな半導体を採用することによって小型化している。
今回、EVのbZ4Xでは、ESUに組み込まれる車載充電器とDC-DCコンバーターの一体ユニットとして採用されたが、PHEVの場合は車載充電器単体で採用されることも多い。今後PHEV向けでは、大幅な小型軽量化を果たした車載充電器を単体で提案していく方針である。
なお、bZ4X向けでは、豊田自動織機の製品として電動コンプレッサーも採用されているという。
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