クルマの中でQNXとAndroidは競合から協調へ、2025年はさらなる進化の分岐点に:車載ソフトウェア(2/2 ページ)
カナダのBlackBerryが、CASE時代を迎えて複雑化する車載ソフトウェアの開発で存在感を増している。車載情報機器とデジタルメーターなどが一体化した統合コックピットの量産導入に向けて、これまで競合関係にあったAndroidとも協調路線を取るなど事業戦略を柔軟に広げているのだ。
2025年前後にドメインコントローラーとAUTOSAR APの量産導入が始まる
BlackBerryは、今後の車載ソフトウェア市場の拡大で分岐点になるタイミングを2025年前後と見ている。BlackBerry Japan フィールドアプリケーションエンジニアの稲見和典氏は「自動車の電気電子システムのアーキテクチャ(E/Eアーキテクチャ)が、個別ECU(電子制御ユニット)の集合から、大きな機能枠ごとのドメインコントローラーに統合されていくことになる。その移行時期は2025〜2026年ごろになるだろう」と述べる。
このドメインコントローラーには、先述の統合コックピットにも採用されているハイパーバイザーの採用が見込まれている。従来の個別ECUと異なり、より機能が集積されることになるドメインコントローラーだからこそ、車載システムごとに求められる機能安全への対応の分離や切り分けに活用できるハイパーバイザーの有用性は高い。
また、ドメインコントローラーに先行する形で2024〜2025年に一部の量産採用が始まる、車載ソフトウェア標準のAUTOSARの次世代規格であるAUTOSAR Adaptive Platform(AUTOSAR AP)でもQNXは対応OSとして採用されている。これまでは“QNXはコックピット周り”というイメージが”強かったが、2025年からはドメインコントローラーやAUTOSAR AP関連で制御系への浸透も始まる見込みだ。
既に採用実績のある統合コックピットでも、展開をさらに広げようとしている。現在、車載情報機器のプラットフォームとしては、Androidベースの「Android Automotive OS(AAOS)」が有力視されているが、AAOSの統合コックピットへの組み込みを容易にする「QNX Advanced Virtualization Frameworks(QAVF)」を発表した。最新版のQAVFは、AAOSが規定する仮想化入出力インタフェースであるVirtIOと、Googleが提供するAAOS仮想化ツールの最新版「Trout 1.0」に対応している。「VirtIOとQNX Hypervisorにより、ハードウェアに合わせてドライバソフトウェアを開発するなどの手間が必要なくなる。CASE時代に入ってティア1サプライヤーに求められる開発リソースは急増しているが、QAVFを使えばハードウェアに合わせて行うべき開発を最小限に抑えられる」(稲見氏)という。
また、QAVFは、車載オーディオシステムの開発の効率向上に役立つ。カーラジオとスピーカー程度しかなかった時代とは異なり、車載情報機器を用いたハンズフリー通信や、座席ごとに異なる動画コンテンツを楽しめる車載マルチメディアなど、車載オーディオシステムに求められる要求は厳しくなっている。QNXは、車載オーディオ向けのソフトウェアも展開しており、QAVFによってこれらと連携した効率的な開発が可能になるという寸法だ。
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