QNXは車載ソフトの安全とセキュリティを重視「AndroidやLinuxは脆弱性だらけ」:車載ソフトウェア(1/2 ページ)
ブラックベリーは、車載分野を中心に組み込みソフトウェアを展開するBlackBerry QNXの事業戦略について説明。QNXが得意としてきた安全に関わる機能に加えて、新生ブラックベリーが重視するセキュリティの機能も車載分野に提案していく方針を示した。
ブラックベリー(BlackBerry)は2017年11月21日、東京都内で会見を開き、車載分野を中心に組み込みソフトウェアを展開するBlackBerry QNX(旧QNX Software Systems、以下QNX)の事業戦略について説明した。
ブラックベリーと言えば、かつてはスマートフォンとその関連サービスが中核事業だったが、2014年から事業の主体をソフトウェアとセキュリティに移行している。同社の先進技術部門に当たるBlackBerry Technology Solutions セールス&マーケティング担当 上級副社長のケイヴァン・カリミ(Kaivan Karimi)氏は「新生ブラックベリーが受け継いだセキュリティについては、G10の全ての国、G20のうち16カ国の治安当局が何らかの形でブラックベリーのセキュリティ製品を導入している」と語る。
新生ブラックベリーで重要な役割を果たしているのがQNXだ。高い採用実績を持つ車載情報機器向けのOSやミドルウェアを中核に、産業機器、通信機器、鉄道、医療機器をはじめとするミッションクリティカル分野で「1000以上の顧客、1億以上のデバイスに利用されている」(カリミ氏)という。続けて同氏は「QNXはほぼ全ての自動車メーカーに採用されている。米タイム誌が『自動車業界にとってのQNXは、PCにとってのWindowsと同じようなもの』と評したほどだ」と強調する。
ECUはドメインコントローラーへの統合が進む
会見では、日本の自動車業界が目指している、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせた自動運転技術の導入にQNXが積極的に貢献していく姿勢を示した。
ブラックベリーの上級副社長でQNXのジェネラルマネジャーを務めるジョン・ウォール(John Wall)氏は「車載ソフトウェアは年々大規模かつ複雑になっている。高級車のECUの搭載数は100個を超え、ソフトウェアコード行数は1億行以上にのぼる。この1億行という数字は、WindowsとB787のソフトウェアコード行数を足した数よりも多い」と説明する。また、2030年時点の自動車のコストのうち50%が、半導体や電子部品、車載ソフトウェアによって占められると予測されている。車載ソフトウェアは、その50%の中で最も大きな構成要素だ。
QNXは、100個ともいわれる自動車のECUが、大きな機能枠ごとのドメインコントローラーに統合されていくと想定している。「ただしECUの統合が進むと、自動車の機能安全規格であるISO 26262で高い安全レベルを求める機能とそうではない機能、リアルタイム性を求める機能とそうではない機能などが同居することになる。これを実現するには、ISO 26262で最も高い安全レベルであるASIL Dの認証を取得したOS、ミドルウェア、仮想化のためのハイパーバイザーが必要だ。QNXはこれらを提供できる数少ない企業だ」(ウォール氏)という。
また、ECUをドメインコントローラーに統合していく構想に対しては、制御系システムの車載ソフトウェア標準であるAUTOSARを拡張した「AUTOSAR Adaptive Platform」が検討されている。ウォール氏は「AUTOSAR Adaptive Platformの要件はPOSIX準拠であることが求められる。QNXは最も高いレベルでPOSIXに準拠しており、優位なポジションにあると考えている」と述べる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.