繰り返し注文の実績を販売計画と連携、ヒロセ電機が製造特化基盤を導入した理由:製造IT導入事例(2/2 ページ)
セールスフォース・ジャパンは2022年7月12〜19日にかけて、製造業など業界別のデジタル変革などを紹介する「Salesforce Industries Summit」を開催した。本稿では、ヒロセ電機による「Manufacturing Cloud」の導入事例に関する講演を取り上げ、紹介する。
国内企業ではなく海外でパートナー企業を探す
ただし、既存のSales CloudからManufacturing Cloudへとシステムを置き換えるに当たって、課題も生じた。その1つが、Manufacturing Cloud導入を国内だけでなくグローバル拠点全体で進めなければならなかった点である。このために「製造業へのセールスフォース製品の導入実績やノウハウを持ち、限られたコストや時間でグローバル同時導入を支援し得るパートナー企業を求めた」(田島氏)という。また、海外営業業務プロセスもManufacturing Cloud上で管理するようになるため、複数拠点間で合意を形成した上で具体的な導入支援までサポートできる企業を選定する必要があった。
ヒロセ電機はこうした条件に該当するパートナー企業を探したが、国内では該当する企業が見つからなかった。「Manufacturing Cloudが導入当時は新しいソリューションだったので、導入に当たって調査期間が必要だと言われた。また、システム開発と別に製造業専門のBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)のコンサルティング担当者をアサインする必要があるという指摘もあった。全体的に国内のパートナー企業だと工数が掛かる上、導入までのリードタイムも長くなるのではという予測があった」(田島氏)。
そのため、海外のパートナー企業を探したところ、製造業導入に強みを持ち、かつ、Manufacturing Cloud導入実績がある企業が見つかった。その企業は複数拠点への導入を支援するManufacturing Cloudの導入テンプレートを持っており、さらにコンサルタントなどを抱えているため導入がワンストップで完結するという強みも持っていたという。
そこで、その海外企業とともにManufacturing Cloud導入を進めることにした。同企業が持つ導入テンプレートでは、導入フェーズが「リード/活動管理」「新規ビジネス」「ランレートビジネス」「分析」の4パートに分けられており、それぞれ導入に当たって必要となる事項を討議するワークショップがひも付いていた。例えば、ランレートビジネスでは、受注後の販売計画管理や実績のひも付けの仕方に関するワークショップを開催し、最終的にManufacturing Cloudを通じて必要なデータを全て収集できるようにする体制を整える、といった具合である。
ワークショップ開催に当たっては、ヒロセ電機の国内外の各拠点からメンバーをグループに分けて招集し、2、3回程度のセッションを行った。ワークショップではコンサルタントが各回のテーマに関する業務について、その目的を尋ねて、得られた回答をシステムへの要望としてまとめていく作業を行った。オンライン上で付箋状のシートを使った共同作業が行える、ブレインストリーミング用ツールを活用することで、ワークショップで出た意見を記録し、他拠点でも共有し、論点を共通化できるようにした。「全体として『システムをどのように実現するか』ではなく、『何を実現するか』を重視したワークショップを心掛けた」(田島氏)という。
田島氏は今後の展望について「Manufacturing Cloud導入が当社にとって本当の意味でのセールスフォース活用のスタートであると考えている。まだ顧客企業の期待に応えられていない面もあるので、Manufacturing Cloudの真の活用方法を追求していく中で解決していきたい」と語った。
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