顧客のロイヤリティーを一元的に把握できるセールスフォースの新サービス:製造ITニュース
セールスフォース・ドットコムは2021年5月20日、業界特化型CRMソリューション「Salesforce Industry 360」の新サービス「Loyalty Management」の発表会を開催した。サービスを利用することで、顧客に一貫性のあるロイヤリティープログラムを提供して、顧客満足度向上を目指せる。
セールスフォース・ドットコムは2021年5月20日、業界特化型CRM(顧客関係管理)ソリューション「Salesforce Industry 360(以下、Industry 360)」の新サービス「Loyalty Management」の発表会を開催した。サービスを利用することで、顧客に一貫性のあるロイヤリティープログラムを提供して、顧客満足度向上を目指せる。
ロイヤリティーマネジメントを容易化
Industry 360はセールスフォースが展開するCRM「Salesforce Customer 360(以下、Customer 360)」を、製造業やエネルギー、金融、小売り、医療など業種別に特化したソリューションの総称である。過去のCustomer 360ユーザーによる業界ごとのカスタマイズ実績、セールスフォースによるマーケットリサーチや顧客の意見などを基に設計した、業種別に最適化されたロジックなどを利用できる。
今回新発表されたLoyalty Managementは、Industry 360上で利用できるロイヤリティーマネジメントサービスである。
企業は、顧客ロイヤリティーを管理する上で、顧客満足度の売り上げへの貢献や、休眠会員の呼び戻し施策の効果測定、クーポン発行による収益へのマイナス影響の調査などを行う必要がある。そういったロイヤリティープログラム運営に必要な機能に加えて、施策効果分析のためのBIツール「Tableau CRM」と分析テンプレートを標準で利用できるようになっている。
最大の特徴は、直感的に設計されたUI(ユーザーインタフェース)上でロイヤリティープログラムの利用状況や詳細、会員情報を一元的に把握できる点にある。ロイヤリティープログラムの管理や設定、顧客会員の情報管理、ロイヤリティープログラムでユーザーに付与したポイントを利用できるパートナー企業の管理、顧客の行動ロジックを定義して利用ルールを設計できる管理機能や、商品の無料配送や特別体験プログラムを管理する機能が備わっている。
この他にも、期間限定のプロモーションなどを設計できる動的プロモーション管理や、特定商品に使えるクーポンを設計するバウチャー管理、ロイヤリティーに応じて顧客を階層別に管理する機能などがある。
これらの機能を活用することで、さまざまな顧客接点で顧客ロイヤリティー向上や維持のための施策が打ちやすくなる。例えば、コンタクトセンターで顧客から商品やサービスに関するクレームを受けた際に、担当したオペレーターがその顧客のロイヤリティーマネジメントに関する情報を確認できるように設定可能だ。ロイヤリティーに応じた対応可能な品質基準を確認する他、過去の顧客満足度調査の結果を見る、特別対応としてポイントを顧客に付与することなどもできる。
また、使い方次第ではリアル店舗などオフラインでの購買からEコマースなどオンラインへと購買チャネルの移行を促す、オペレーターが対応するコールセンターの利用からAIチャットbotを利用するよう動機づけるなど、顧客行動を変化させるための施策も打てる。
セールスフォースのソリューションと連携したロイヤリティープログラム運用やデータ分析にも対応する。Industry 360を基盤としたサービスであるため、ロイヤリティープログラム開発のためのインフラ構築をノーコード開発環境で行える。ソフトウェアアップデートは年3回実施されるため、ユーザーは最新の機能を利用できる。
ロイヤリティープラグラムに満足している顧客は22%
現在、多くの企業が自社ブランドに対する顧客ロイヤリティーを育てるための施策に取り組んでいるが、課題も多い。セールスフォース・ドットコム インダストリーズ トランスフォーメーション事業本部 小売り消費財 シニアマネージャーの国元久成氏は「セールスフォースが実施したグローバル調査では、企業が提供するロイヤリティープログラムに満足している顧客は、プログラム利用者の22%しかいないという結果も出ている。不適切なロイヤリティープログラムはむしろ顧客の離反を招きかねない」と指摘する。
また、国元氏は顧客ロイヤリティー育成におけるポイントについて、「割引特典や会員限定のポイントなどの経済的ベネフィットの提供と、企業が顧客を大切に扱っていることをカスタマージャーニー全体で一貫性を持って発信する施策を両輪で展開すべきだろう」と語る。顧客ロイヤリティー向上を目指す施策では、ポイント付与などが重視されがちだが、企業が顧客に関心を払っているというメッセージの発信も重要になる。
ただ、カスタマージャーニー全体で一貫性のあるロイヤリティープログラムを顧客に提供するには、ロイヤリティープログラムの設計を担うマーケティング部門だけでなく、財務会計やIT部門など複数部門が連携する必要がある。1つのキャンペーン施策を実行するだけでも、顧客へのキャンペーン告知や顧客サポートなど多岐にわたる顧客接点が生まれる上、POSシステムやクーポン配信システムなど複数のシステムを運用することになるからだ。
国元氏は「迅速な施策展開を望むマーケティング部門に対して、IT部門の対応が追い付かず足かせになるケースもある。システムアップデートの速度には制約があるが、これでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で生じたような、業界の急速かつ大きな市況変化に柔軟な対応が取れず、効果的な顧客獲得キャンペーンを打てない。Loyalty Managementを使用すれば、迅速に効果的な施策が打てるようになる」と説明する。
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