データ分析は「セルフサービス」で、住友ゴム工業がBI導入で目指す文化づくり:製造IT導入事例
セールスフォース・ドットコムは2021年6月1日から4日にかけて、同社製品のユーザー事例などを紹介するイベント「Salesforce Live: Japan」を開催した。本稿では、同イベントのセッション「住友ゴム工業におけるデータドリブン文化情勢とAI民主化の取り組み」の内容を抜粋してお届けする。
セールスフォース・ドットコムは2021年6月1〜4日にかけて、同社製品のユーザー事例などを紹介するイベント「Salesforce Live: Japan」を開催した。本稿では、同イベントのセッション「住友ゴム工業におけるデータドリブン文化醸成とAI民主化の取り組み」の内容を抜粋してお届けする。
データドリブン文化の醸成を目指す
住友ゴム工業では現在、社内でのデータ活用や分析活動を推進する取り組みを実施している。その具体的な施策を展開している部署が、「製品IoT推進室」だ。住友ゴム工業 製品IoT推進室 課長代理の金子秀一氏は部署の役割について、社内で「データ収集」「データ分析」「データのフィードバック」を行うための仕組みづくりを行い、ビッグデータの活用体制を整備することだと説明する。そして、もう1つの役割が「データドリブン文化の醸成」だという。
「データの活用基盤だけ整えても、使われなくては意味がない。現場の個々人がデータに基づいた意思決定を行う、データドリブンな社内活動を促進する必要がある」(金子氏)
しかし、製品IoT推進室が発足した当時の住友ゴム工業では、社内にITシステムが乱立して、データ自体も社内で個々人が所有、分析するなど属人性が高い状況だった。こうした状況を変革するために同社はBI(Business Intelligence)ツールとして「Tableau」を導入する。目的は「自分でデータを見て、分析する」という社内文化を醸成することにあった。金子氏はガソリンスタンドのサービス方式になぞらえて「(データ分析を)フルサービスからセルフサービスに移行した」と表現する。
製品IoT推進室は社内でのTableau普及を目指して、困りごとに迅速に対処するサポート環境を導入した他、Tableauユーザーの社内コミュニティーを設置するなど、安心してツールを使える環境整備を進めたという。また、例えば「(Tableauを)知らない」段階の人には認知度やイメージを伝える施策を、「使えない」段階の人には実際に使ってもらうための施策を展開するなど、個々人のTableauの活用度合いに合わせた普及施策の調整も行った。
これらの活動を通じて、社員がデータ同士の組み合わせから新しい気付きを獲得できるようになった他、Tableauを通じた情報共有の効率化やデータ収集プロセスの短縮化などが可能になったという。
BIとAIの“融合”を目指す
住友ゴム工業では自社内のデータドリブン化を進める上でAI(人工知能)の活用推進も重視している。金子氏はAIを活用する上でもTableauのようなBIツールは重要だと指摘して、「BIツールのインタフェース上でデータを収集、可視化して、AIによる予測分析や、高度な意思決定に生かす。BIとAIの融合が大事だ」と語る。
また金子氏は、AI活用を現場で普及させるためには「AIを使うことのうれしさ」を伝えると共に、「AIを意識せず使える仕組み」を導入することが重要だとも指摘した。「うれしさ」については、BIを通じて必要なデータを収集して可視化、分析を経ることで新たな問題発見や原因分析につなげることなどを挙げる。これらのメリットを社員に伝えることで自発的にデータ収集、分析することを促す。「意識せず使える仕組み」については、データを自動分析するAIモデルをシステムに組み込み、現場の社員が自主的に使用できる環境を整えることで、社内での「AIの民主化」を推進するという。
金子氏は住友ゴム工業社内でのデータ活用の取り組みについて、「将来的には商品企画や設計、試作、購買、生産、物流、販売などの各部門間で、必要なデータを即時入手できる社内体制『データ活用360°』の実現を目指したい。社内のデータドリブン文化醸成の進捗はまだ3合目といったところで、今後、さらに取り組みを続ける必要がある」と展望を語った。
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