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【ケース3】正しい出図管理ができていない……設計現場のデータ管理を考える(3)(2/2 ページ)

3D CADの本格運用に際して直面する「データ管理」に関する現場課題にフォーカスし、その解決策や必要な考え方を、筆者の経験や知見を交えて解説する。第3回のテーマは「正しい出図管理ができていない……」という状況を取り上げつつ、出図管理の考え方やPDMで何ができるかについて述べる。

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3D CAD運用による出図管理の課題

 前述の通り、3D図面そのものに承認印はありません。2D CAD運用時には、紙図面もしくは2D CAD図面の表題欄に承認印があるものだけが、本来“正式な図面”として認められていました。3D CAD運用では、2D組立図もしくは2D部品図の表題欄でこの管理は可能になりますが、3D図面でこれを行うにはどうしたらよいでしょうか。

 この管理がうまくできなければ、誤った3D図面の共有や2D図面の出図につながってしまいますし、進んだ企業であれば誤った3D部品図による加工が行われてしまうかもしれません。また、組み立て現場では、改訂前の3D組立図で製造を行おうとし、実際に納入された部品との差異が生じて混乱をきたしてしまいます。

 PDMシステムではサーバ上でデータ管理が行われますが、これを正しく行うためには3D図面のステータス管理が重要となります。

ワークフローで図面のステータス管理をする

 PDMシステムには「ワークフロー」という機能があります。これを使用することで理想的には、3D図面のステータス管理が可能になります。このワークフローでは、データの公開について制御することが可能です。

 筆者が知る基本的な機能について簡単に解説します。「SOLIDWORKS PDM」でも意図する機能は基本的に同じですが、ここでは富士通の「COLMINA CADデータ管理(旧:PLEMIA Concurrent Design Manager)」を例に、PDMで何ができるのかを解説します。

PDMでできること

  • 排他制御
    • 所有権・専有権:仕掛かり中(詳細設計中、正式な編集設計中)はその設計者だけが専有権を持つ
  • ステータス
    • 詳細設計中なのか、承認されたものなのかの定義と制御が可能
    • ステータスの例:
      • 設計中:占有権を設計者が持つ。その設計者はワークフローに定められた承認者に対して承認依頼ができる
      • 承認済み:誰も更新はできない。正式にPDMより持ち出したファイルを更新した場合は次の版を作成できる

ワークフローの例
図3 ワークフローの例[クリックで拡大]

 PDMを活用し、図3のようなワークフローで正しく承認プロセスを経ることで、間違いのない3D図面の共有(=正しい出図管理)が可能となり、次のような効果が得られます。

  • 仕掛かり中はその設計者が専有権を持つため、「設計中である」という共通認識を共有できるとともに、他の人は編集できないので、誤ってこれを使用することがなくなる
  • 新規図面、改訂図面ともに3D図面に対する承認管理ができるようになる
  • 承認済みの図面=正式な図面という定義の認識ができ、かつ勝手に編集できなくなることからデータの信頼性が高まる

 今回は、正しい出図管理について解説しました。2D CAD運用で十分な管理ができていなかた場合も、3D CAD導入を機にデータ管理の在り方について見直してみたらいかがでしょうか。次回は、PDMから見る3D CAD構成について解説します。お楽しみに! (次回に続く

⇒「連載バックナンバー」はこちら

Profile

土橋美博(どばし・よしひろ)

1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置メーカーで設計・営業・3次元CAD推進を行う。現在、液晶パネル製造装置を主体に手掛けるプレマテック株式会社で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)/SOLIDWORKS User Group Network(SWUGN)のリーダーも務める。


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