CADやPDMの“使い勝手”を追求する:DMS2012を歩く(3)(1/2 ページ)
2012年6月に開催した第23回 設計・製造ソリューション展に見た業界動向を考察するシリーズ。今回は、クリエイティブマシンのブースのCADやPDMについて紹介する。
さて前回もお話したように、DMSにおいてCADやCAEのブースが徐々におとなしくなってきているとはいえ、いまの製造業にとって3次元データは欠かせない存在です。
DMS会場で、丁寧にブースを回っていくと、結構な話の聞きがいがあります。説明員の皆さんは、接客で忙しいのにもかかわらず、ブースを訪れた私に丁寧に製品について説明してくださいました。
これから紹介する企業ブースも、まさにその1つ。たっぷりと充実した時間を過ごせました。
はるばる九州から。クリエイティブマシン
DMS2012の2日目(2012年6月21日)、午前中に訪問したのはクリエイティブマシン(宮崎県宮崎市)のブースです。今回紹介いただいたのが、同社の販売する3次元CAD「IRONCAD」、PDM(製品データ管理)ソフト「DDM」、それにVisual Componentsのデジタルファクトリー製品群でした。
私が同社のブースを訪れたとき、大きなタッチスクリーンでのデモンストレーションを実施していたところでした。ここではさまざまな部門担当とのデザインレビューなどの場面を想定し、タッチパネルで操作しながら3次元モデルを確認したり、修正したりということをしていました。
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まずは見栄えのするデモを拝見した後で、IRONCADのお話を聞きました。
IRONCADとは
さて、このIRONCADですが、実はこのDMSレポートとは別で、私のコラム連載「3次元って面白っ!」の「ダイダイダイレクト祭」で取り上げる予定のCADなのです。詳しいことはそちらで紹介することとして、今回は基本的な紹介に留めます。
現在、製造業で使用されている主要な3次元CADの機能そのものについては、「もはや、大きな違いはない」。それは、多くの方に同意していただけるのではないかと思います。もちろん、細かい機能を比較すれば、「あちらのCADよりも、こちらのCADの方がやりやすい」といった違いは存在するでしょうが、ほぼ同価格帯のCADを使用している限りにおいては、極端な差は見られません。
また、かつては展示会が催されるたびに登場していた“飛び道具”(ユーザーの目をひく機能)が出てくることも少なくなりました。
今日では、どのCADベンダーも「3次元データを活用するための付加価値」、例えば「CAE(解析機能)」や「ビジュアライゼーション」をユーザーに訴求したり、あるいは「使い勝手の向上」に力を入れたりしています。私のコラムの「ダイレクト祭」も、言ってみれば、そのような活動を紹介するためのものといえます。
そこで今回紹介するIRONCADですが、フォーカスしたいのは、やはり「使い勝手」です。実は筆者、IRONCADの操作をしっかりと見たのは、今回が初めてでした。じっくりと自分で試していけば、もちろん、さらなる発見はあると思うのですが……、今回はブースで紹介していただいたときの“ザクっとした”印象からお話しましょう。
まず、パッと印象に残ったのは、「パーツやフィーチャの扱いや、アセンブリのやりやすさ」でした。
IRONCADが、その特徴として打ち出している機能に「TriBall(トライボール)」があります。TriBallとは、IRONCAD上のパーツやフィーチャなどを含む、あらゆる3次元オブジェクトをユーザー任意の場所や方向に移動したり、コピーしたり、さらには配列まで行える機能です。例えば、目的のフィーチャを選んだ上で、マウスの右クリックで表示されるコンテキストメニューに従って、目的の操作を完了させればよいわけです。
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「形状作成」以上に、「形状編集」は、使用頻度の高いコマンド類だと思います。だからこそ、使い慣れている人であっても、そのような編集作業に掛ける手数が少ないなら、それにこしたことはないでしょう。
一般的に「3次元CADで形状作成する」と言えば、ほとんどの場合には、
「まずスケッチして、それに対して任意のフィーチャを使って、目的の3次元形状を作成していく」
という手順になるでしょう。つまりユーザーは、「スケッチとフィーチャで、どんな形状になるかを考える」必要があるわけです。
一方、IRONCADのモデリングでは、
「カタログから必要な形状のブロックをドラッグ&ドロップして、パーツの形状を作成していく」
というアプローチが取れるのが特徴です。
つまり、「スケッチから押出し」といった作業なしで、直接形状が作成できるのです。
作業量全体を見ていけば、トータルの工数が大きく削減できそうです。カタログには、機械部品などを設計する際に多用される形状があらかじめ用意されています。
もちろん、単に、形状をドラッグ&ドロップしただけでは、パーツは作れません。それを必要な場所や向きにくっつける必要があります。
そのために、「スマートスナップ」という機能があります。これによって面、エッジ、中間点、頂点などに容易にスナップできます。形状編集もダイレクトにできるため、かなり工数削減できそうですね。
確かに、「スケッチから、さまざまなフィーチャを使いこなす」方が、作成できる形状の自由度や柔軟性が高いのは確かでしょう。機械部品の場合には、かなり複雑に見える部品であっても、個別のフィーチャを見ると、比較的シンプルなものであることがほとんどです(ただし樹脂部品の筺体については、別の話かもしれませんが)。
であれば、IRONCADのアプローチはかなり有効でありましょう。
ところで、「パーツの作成・編集をいかに簡単にするか」ということは、非常によく語られるトピックですが、「いかに簡単に、アセンブリをするか」ということも重要なポイントではないでしょうか。
実際、私自身が新しいCADを触ったときに悩むのが、パーツ形状の作成ではなく、アセンブリ構築の際の操作関連です。
IRONCADでは、アセンブリ内でパーツの追加・削除が可能です。
また、アセンブリにおいて、「パーツの位置決め」は、CADごとに特徴があって迷うことが多いポイントですが、IRONCADでは「スマートディメンション」や「スマートアセンブリ」などの機能を用いることで、パーツ作成と同様に直観的な操作感を実現しています。
“業界の二大カーネル”を搭載
そうそう、他のCADでは見掛けないIRONCADの特徴としていえるのが、「デュアルカーネル」です。IRONCADは、ACISとParasolidという“業界の二大データカーネル”を搭載しています。しかもIRONCADでは、同じシーンの中で混在させることができるとのこと。
これには「お!」と思う方も多いかもしれませんね。これは水野自身、気になったポイントでした。
特に、データの受け渡しで日常苦労しているのであれば、なおさらでしょう。もちろんデータ受け渡しにおける問題については、決して、カーネルが全ての原因ではありませんが。
さてIRONCADについては、ダイレクトモデリングなども含めて、もっと細かく紹介したいところですが……。今回の目的はあくまで「DMS2012のレポート」ですから、詳しいことは、先に申しました通り、後々、私のコラムで取り上げるということで、別の製品についての話題に進みましょう。
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