製品表面のμm単位の欠陥を可視化、生産ラインでリアルタイムに識別:FAニュース
東芝は2022年8月1日、生産ラインで搬送中の製品表面の微細な欠陥を可視化、判別する光学検査技術を開発したと発表した。今後、東芝デジタルソリューションズより画像検査ソリューション製品として販売する。
東芝は2022年8月1日、生産ラインで搬送中の製品表面の微細な欠陥を可視化、判別する光学検査技術を開発したと発表した。今後、東芝デジタルソリューションズより画像検査ソリューション製品として販売する予定となっている。時期は未定。
労働力不足や熟練技能者の引退が続く中、製品の外観検査においては画像検査の導入による自動化が進んでいる。ただ、表面のわずかな傷などは明暗のコントラストがつきにくく、引き続き熟練者による目視や触診検査が行われているケースが多い。
東芝では2019年に、エリアカメラ向けにμm(ミクロン)単位の微細な欠陥を鮮明化する光学検査手法「OneShotBRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)」を開発した。ハーフミラーを用いて平行光を対象物に当て、欠陥によって生まれるわずかな反射光のずれをカラーフィルターによって色で識別することで、従来の画像検査では捉えられなかったμm単位の微小な欠陥を、瞬時に可視化できるようになった。
一方で、撮像レンズの大きさに制限があり、有効径は50mm以下だった。今回は、同技術を多くの生産現場に取り入れられているラインカメラ向けに適用した。
ラインカメラに対応するためには、検査対象となる被検物の搬送方向と幅方向の情報を取得して欠陥の位置を特定する必要がある。そこで、独自のライン照明とストライプ状の多波長開口により、搬送方向には平行光で光の方向に応じて色を対応させる光方向識別機能を、幅方向には拡散光で全視野を取得する機能を持たせた。
欠陥の無い平滑な被検物に照明を照射すると、光は搬送方向には平行を保ったまま正反射される。それらの光は、多波長開口の幅方向に一様な色の中心ラインを通過し、全て同じ色として撮像される。一方、被検物に欠陥がある場合、照明光はさまざまな方向に散乱する光となる。多波長開口は搬送方向には色が変化するフィルターとなっているため、それらの光は多波長開口の搬送方向へも広がり、光の方向に応じて異なる色となって撮像される。
これにより、撮像レンズの有効径に制限されることなく、ラインセンサーの幅に応じて撮像できるようになった。大きな製品や円筒形製品の側面の検査など対象をより広げ、実用的なインライン検査システムの構築が可能になる。
実験では幅180mmのプラスチック板の表面にある深さ1〜2μmの傷や、幅70mmの紙のわずかな表面の粗さも識別することに成功した。今後は色による傷の種類判別の拡大などにも取り組む。
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