人の目を傷つけずにレーザー光の強度をアップ、LiDARの小型化と長距離計測を両立:車載電子部品
東芝は2022年3月18日、人の目に対する安全性と長距離計測、小型化に貢献するLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)向け投光器を開発したと発表した。
東芝は2022年3月18日、人の目に対する安全性と長距離計測、小型化に貢献するLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)向け投光器を開発したと発表した。
投光器のサイズを従来比4分の1とし、その投光器を2個使用した。解像度が1200×84画素で計測距離300mを達成した。また、人の目に害のない範囲でレーザー光の強度を向上した。
2023年度の実用化を目標に、自動運転車の他、道路監視インフラ、AGV(無人搬送車)などに向けて提案していく。
東芝は2021年に、体積350cm3、計測距離200m、解像度が1200×80画素のLiDARを発表した。このとき大きく貢献したのは受光器側の技術で、今回は計測距離をさらに伸ばすために投光器を進化させた。LiDARはレーザー光が物体に反射して戻ってくるまでの時間を計測して距離を測る。受光感度を高めるだけでなく、レーザー光の強度を向上させることが必要だった。
レーザー光の強度を高める上では幾つか課題がある。1つは、街を走る自動車や道路監視インフラに搭載する以上は人の目に害のない範囲の強度にとどめなければならないという制約だ。1つの投光器で計測距離を300〜400mまで引き上げることもできるが、安全に扱うことが難しくなる。
レーザー光の安全基準はJIS C 6802で定められており、安全レベルが最も高い「クラス1」は、どのようなレンズで集光しても目に対して安全なレベル(アイセーフ)と定義されている。もう1つの課題は、レーザー光の強度を増強するには投光器のサイズが大きくなってしまうという点だ。
東芝は、投光器のサイズの課題を解決するため、モーター制御基板を筐体に合わせた形状にして、基板自体の面積を60%低減するとともに、基板が筐体内で各部品の隙間に入るよう高密度にレイアウトして小型化を図った。
また、レーザー光を計測に必要な形状に調整するには複数のレンズにレーザー光を当てて長い光路を確保する必要があるが、投光器の内部で光源からミラーまでの光路を曲げられるようレンズを3次元で実装した。これにより、従来と同じ光路長を確保しながら小型化することができた。
レーザー光の強度は、投光器を2つ使うことで向上させた。筐体の小型化によって、同じ強度のレーザー光を従来の4分の1のサイズの投光器で出力できるようになり、その投光器を2つ組み合わせても従来の半分の体積となる。JIS C 6802の基準ではクラス1からワンランク下の安全性となる「クラス1M」に該当する。
ただ、投光器を2つ使ってレーザー光の強度を高めるには、レーザー光をズレずに重ねて照射できなければならない。そこで、複数の投光器でポリゴンミラーの回転速度と回転角度を同期させるため、モーター制御技術を生かして回転角度と回転速度、電流を制御する3重制御ループを開発し、同期の角度のズレを0.02度以下に抑えた。
レーザー光の強度がアップしたことで、点群データが従来よりも明るく、鮮明に得られる。また、今回開発した投光器によってLiDARのバリエーションを増やす。投光器1つの小型タイプや、3つ以上の投光器を組み合わせることで広角タイプとして提供できるという。
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