システムが担う運転の「認知」「判断」「操作」、深化と普及が進む:MONOist 2022年展望(1/3 ページ)
レベル3の自動運転システムが世界で初めて製品化され、ハンズオフ機能が広がり始めた2021年に対し、2022年以降は、高度なADASやレベル3の自動運転の普及と競争が一層進みそうです。
2021年はADAS(先進運転支援システム)と自動運転システムが大きく前進した1年でした。
その代表例は、ホンダが3月に発表した「レジェンド」です。渋滞中の高速道路を対象としたレベル3の自動運転システムを含む、高度な運転支援システム「Honda SENSING Elite(ホンダセンシングエリート)」を搭載したのがポイントでした。レベル3の自動運転では、ADASに相当するレベル2までの自動運転とは異なり、ドライバーは周辺監視から離れることができます。クルマの運転に必要な「認知」「判断」「操作」の全てをシステム側で担うからです。
なお、アウディが2017年7月に「世界で初めてレベル3の自動運転に対応した」とうたってフラグシップセダン「A8」を発表しましたが、当時はどの国でも法規制が整備されておらず、ドライバーが周辺監視から解放されることは認められませんでした。日本に導入された際も、レベル3の自動運転車に不可欠なハードウェアが省略されており、厳密には「レベル3の自動運転車として発売した」とは言えませんでした。
100台限定のリース販売だったとはいえ、レジェンドに搭載したレベル3の自動運転システムは、世界に先駆けた製品化です。
高速道路を走行中であるなど一定の条件下でステアリングから手を離すことができる“ハンズオフ”に対応したモデルも増えました。レベルで分類するとすればレベル2の自動運転となり、ドライバーは周辺監視を続ける必要があります。ハンズオフに関して2021年に話題になったのは、トヨタ自動車が、レクサスブランドのフラグシップセダン「LS」と燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」に、高度運転支援技術の新機能「Advanced Drive」を搭載したというニュースです。
ハンズオフ対応のADASは、日産自動車の「プロパイロット2.0」、SUBARU(スバル)の「アイサイトX」、ホンダ「ホンダセンシングエリート」、そしてトヨタ自動車の「Advanced Drive」と各社から市場投入された格好です(ホンダセンシングエリートを搭載したレジェンドは2021年末で生産終了)。アイサイトXは「レヴォーグ」に続いて「レガシィ アウトバック」にも搭載されており、プロパイロット2.0は「スカイライン」に加えて電気自動車(EV)「アリア」でも採用されるなど、複数車種への展開が進み始めています。
トヨタ自動車のAdvanced Driveとホンダセンシングエリートは、周辺監視用のセンサーの1つにLiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)を使うという特徴があります。
ホンダセンシングエリートでは車両の四隅と後方に合計5個、Advanced Driveでは発売当初は前方に1個のLiDARを搭載しました。LiDARが監視している方向を異なる検知方式のセンサーでもカバーし、冗長化しています。
もちろんLiDARを搭載する理由は冗長化だけではありません。ホンダセンシングエリートではドライバーが周囲を確認した上でウインカーを操作すると、その方向にハンズオフのまま車線変更することができます。そのためには車線変更しようとする車線に車両がいないことを今まで以上に確実に検知する必要があり、LiDARの特性である解像度の高さが向いていると判断しました。しかし、ホンダセンシングエリートやAdvanced Driveのハンズオフ機能をより幅広い車種に展開するには、LiDARのコストはまだ高いといえます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.