製造業のアフターサービスを高度化し、収益性を高めるソリューション提供開始:製造ITニュース
セールスフォース・ジャパンは2022年7月12日、製造業のアフターサービス業務を支援する「Manufacturing Cloud for Service」の国内販売を開始した。スペアパーツの需要予測を行うとともに、アフターサービスに関する情報を製品のバリューチェーン全体で共有する仕組みを提供する。
セールスフォース・ジャパンは2022年7月12日、製造業のアフターサービス業務を支援する「Manufacturing Cloud for Service」の国内販売を開始した。スペアパーツの需要予測を行うとともに、アフターサービスに関する情報を製品のバリューチェーン全体で共有する仕組みを提供する。
「アフターサービス=コストセンター」の認識から脱却
セールスフォースはこれまでにも、製造業に特化したクラウド型CRMプラットフォームとして「Manufacturing Cloud」を提供してきた。その中には、営業向けソリューション「Manufacturing Cloud for Sales」などが含まれている。同ソリューションは量産段階での販売計画や販売予測などとともに、製品販売店や代理店に対するロイヤルティー管理を可能にする。国内製造業のビジネス実態に即したフレームワークが用意されているため、導入企業はすぐに実ビジネスで展開しやすい。
一方、今回国内でローンチを行うManufacturing Cloud for Serviceは、アフターサービスの高度化を支援するソリューションとなっている。セールスフォース・ジャパン マーケティング本部 プロダクトマネージャー 前野英彰氏は「近年、製品だけでなく、サポートやソフトウェア、その他サービスを組み合わせたサービタイゼーションによる収益モデルを確立する動きが活発化している。アフターサービスはコストセンターだという従来の認識から脱却していかなければならない」と指摘する。
Manufacturing Cloud for Serviceが持つ主要機能の1つが「サービス予測」である。アフターサービスにおけるスペアパーツなどの需要予測を行い、アフターサービスを高度化することが可能だ。CRMに蓄積された作業オーダーやサービス契約、注文、保証内容などのデータを特定のロジックに従って分析して予測する。予測結果は製品のバリューチェーン全体で共有され、活用できる。今後、顧客が独自に変数設定などを行ってロジックを設計できるようにする機能などを実装する計画もあるという。
製品販売先企業が操作するカスタマーポータルのUI(ユーザーインタフェース)などをコンポーネントの組み合わせで実現する、ノーコード開発機能も提供する。例えば、メーカーや実際に現場対応するサービス企業が問い合わせに応じて、納入した製品や実際に稼働している製品を検索し、把握するシステムを作ることも可能だ。保守契約やメンテナンスの履歴に加えて、過去の問題解決時のナレッジを、サービス会社のフィールドエンジニア、メーカー側の営業担当者などの間で共有し、確認する仕組みづくりも行える。
従来、販売先企業からの問い合わせは営業担当者がタッチポイントとなって受けることも多かった。こうした方式だと属人性が高く、顧客がどういう困りごとを抱えているのか、営業がどのような対応をしているのかといった情報が、サービス会社やメーカーの他部門に共有されるスピードが遅い。カスタマーポータルの高度化によって、問題解決のスピードを向上させ、販売先企業のエンゲージメントも高める効果が期待される。またメーカー側としても、実際に現場対応を行ったサービス会社が集めた現場情報などを基に、より良い新製品やサービスを開発する効果も期待できる。
セールスフォース・ジャパン インダストリーズトランスフォーメーション事業本部 製造・自動車担当 シニアマネージャーの内藤克義氏は「特に大企業では、顧客からの問い合わせ対応や、問題解決のための情報収集フローが複雑化しがちだ。ローコードツールを使用すればITベンダーに依頼することなく、ポータルサイトが改修できる。改めて、自社に最適なワークフローを設計しやすくなるのではないか」と語った。
また、Manufacturing Cloud for Serviceには顧客アンケート機能が実装されている。製品販売先企業からのフィードバックを、バリューチェーンに携わる関係部署間でSlackなどで共有することもできる。顧客の声(VOC)を生かした製品改善に役立てることが可能だ。
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