耐久レースに同じマシンで出場可能に、群雄割拠のプロトタイプスポーツカーレース:モータースポーツ超入門(15)(3/3 ページ)
プロトタイプスポーツカーレースが群雄割拠の時代を迎える。2023年からFIA世界耐久選手権(WEC)の「ル・マン・ハイパーカー(LMH)」規定と、北米で行われるウェザーテック・スポーツカー選手権(WTSC)の「LMDh(ル・マン・デイトナ・ハイブリッド)」規定との相互乗り入れが実現するからだ。
来シーズンからはフェラーリがハイパーカークラスに参戦する。1973年以来、50年ぶりのワークス参戦となり、7月6日には新型マシンのシェイクダウンを行ったことを明らかにした。公開された映像では大型のリアウイングやシャークフィンが確認でき、リアウイングを持たないプジョー9X8、成熟を重ねるトヨタ「GR010ハイブリッド」とも異なるデザインが来シーズンへの期待感を抱かせる。
LMDh規定におけるマシン開発ではポルシェが先行している。2022年1月にシェイクダウンを行い、6月24日にはマシン名称を「ポルシェ963」にしたことを発表した。ポルシェが選んだシャシーはマルチマチック。これに排気量4.6lのV8ツインターボエンジンとハイブリッドシステムを組み合わせ、マシン開発を進めている。
BMWは、2022年のル・マン24時間レース中の6月6日にLMDhマシン「MハイブリッドV8」を公表した。シャシーはダラーラ。エンジンはドイツツーリングカー選手権(DTM)で使用していた排気量4lのV8をターボ化して搭載するという。
ウェザーテック・スポーツカー選手権のDPiクラスに参戦しているキャデラックとアキュラもLMDhマシンを投入する。キャデラックは6月9日に「プロジェクトGTPハイパーカー」の画像を公開。ダラーラ製シャシーを選択しており、エンジンは排気量5.5lのV8を搭載する計画だ。ホンダが北米で展開するブランドのアキュラは、オレカのシャシーを採用したLMDhマシン「ARX-06」を開発中で、6月3日にティーザー画像を公開した。
ランボルギーニは2024年からWECとウェザーテック・スポーツカー選手権の両シリーズに新型LMDhマシンで参戦することを発表している。シャシーはリジェを採用することも明らかにしており、シャシーコンストラクター全4社が出そろう形となっている。ルノーのスポーツカーブランドであるアルピーヌは現在、WECのハイパーカークラスに参戦しているが、2024年からはLMDhマシンで参戦する予定。オレカのシャシーをベースに開発を続けている。
LMDhにはアウディも参戦を公表していたが、現在、開発を一時休止中だ。一方、英国のマクラーレンがLMDhでの参戦に関心を寄せているとの情報も出ている。2023年シーズンから始まるLMH、LMDhの相互交流。自動車メーカー各社の威信をかけた、群雄割拠、百花繚乱のプロトタイプスポーツカーレースが繰り広げられることになりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 次世代燃料、バイオ素材……国内モータースポーツで加速する脱炭素
国内で行われている3つの最高峰レースカテゴリー「スーパーフォーミュラ」「スーパーGT」「スーパー耐久」において、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが活発になっている。合成燃料や環境配慮素材の採用、次世代パワートレインの先行投入など、将来に渡って持続可能なレースシリーズの構築をめざす動きが急速に進んでいる。 - 2週間で砂漠を疾走するダカールラリーは、電動化技術を磨く過酷な実験室に
1月1〜14日に行われた2022年大会では、世界的な脱炭素化の流れを受け電動マシンが初登場し、大自然を舞台にするダカールラリーは新たなステージに入っている。 - トヨタの水素エンジン車が走った「スーパー耐久」ってどんなレース?
S耐(エスタイ)と呼ばれるレースカテゴリーが日本に存在する。正式名称は「スーパー耐久シリーズ」。「スーパーGT」「スーパーフォーミュラ」と比べるとマイナー感は否めないが、市販車をベースにしたレースマシンで戦う国内最高峰の耐久レースシリーズとなっている。 - 都市型モータースポーツ「フォーミュラE」、アウディBMWの撤退から見える転換点とは
自動車産業が直面する電動化のうねりはモータースポーツにも押し寄せている。F1は運動エネルギーと排気エネルギーを回収するエネルギー回生システム「ERS(Energy Recovery System」を搭載、世界耐久選手権(WEC)の最上位クラスではハイブリッドシステムを採用する。レーシングカーの電動化も市販車と同様に確実に進んでいる状況だ。 - F1の2022年シーズンが開幕、技術規則の大幅改定で空力性能が変わる
2022年シーズンから技術規則(テクニカルレギュレーション)が大幅に改訂され、車体底面の空気の流れを利用してダウンフォースを生み出す「グラウンドエフェクト」が復活する。同時に、ホイールサイズが大径化、バイオ燃料も採用されるなど、かつてない大きな変更が加えられる。 - 電動化でさらにレースを面白く、時速380kmの戦い「インディカー・シリーズ」
時速380kmにも達する超高速スピードで競う北米最高峰のモータースポーツが「インディカー・シリーズ」だ。