耐久レースに同じマシンで出場可能に、群雄割拠のプロトタイプスポーツカーレース:モータースポーツ超入門(15)(2/3 ページ)
プロトタイプスポーツカーレースが群雄割拠の時代を迎える。2023年からFIA世界耐久選手権(WEC)の「ル・マン・ハイパーカー(LMH)」規定と、北米で行われるウェザーテック・スポーツカー選手権(WTSC)の「LMDh(ル・マン・デイトナ・ハイブリッド)」規定との相互乗り入れが実現するからだ。
LMHとLMDhの相互乗り入れが実現することで、WECのLMHマシンがウェザーテック・スポーツカー選手権に、ウェザーテック・スポーツカー選手権のLMDhマシンがWECに出場することが可能になる。さらに言えば、WECのLMHマシンが北米のデイトナ24時間レースやセブリング12時間レースに、ウェザーテック・スポーツカー選手権のLMDhマシンがル・マン24時間レースに参戦することができるようになることを意味する。
このように、世界的に有名な耐久レースに同じマシンで参戦できることが多くの自動車メーカーの関心を引き付ける要因となっている。モータースポーツをブランディングの一環と位置付ける自動車メーカーにとっては、LMHとLMDhがグローバルマーケティング活動を支える重要な車両規則になるわけだ。
余談だが、多くの自動車メーカーがワークス参戦したレースとして、1998/1999年のル・マン24時間レースが思い浮かぶ。1998年はトヨタ、日産、メルセデス・ベンツ、ポルシェ、パノスがLM GT1クラスに、BMWはプロトタイプで出場。1999年はトヨタ、日産、メルセデス・ベンツ、アウディ、BMW、クライスラーがワークス参戦した。今振り返っても大変なにぎわいだ。
トヨタ対プジョー
LMH、LMDhというグローバルプラットフォームが構築されたことにより、プロトタイプスポーツカーレースに対する自動車メーカーの関心はかつてないほど高まっている。
すでにシリーズ参戦している自動車メーカーを両規定ごとにカテゴライズすると、LMH=トヨタ、プジョー、フェラーリ、LMDh=ポルシェ、BMW、アキュラ、キャデラック、アルピーヌ、ランボルギーニに分けられる。相互乗り入れが始まる2023年以降、自動車メーカー各社による百花繚乱のレースが期待されるが、LMH規定を導入したWECでは一足早く、トヨタとプジョーによるバトルが始まった。
2022年7月8〜10日、イタリア・モンツァで開催された第4戦からプジョーのハイパーカーマシン「9X8」がデビュー。同じハイパーカークラスを戦うトヨタ陣営から見ると、LMH規定の中でハイブリッドシステムを積んだ初のライバルマシンが登場することになった。
9X8はリアウイングを持たないマシン造形が特徴だ。ボディー後端と一体化させる空力デザインを採用している。パワートレインは排気量2.6l(リットル)のV6ツインターボエンジンと、最大出力200kWの電動MGU(モータージェネレーターユニット)を前輪に搭載するハイブリッドシステムを採用。最高出力はLMH規定上限の680馬力(500kW)となる。
10日に行われた決勝レースは93号車がリタイア、94号車は完走を果たしたものの、トップから25周遅れとなり、ほろ苦いデビュー戦となった。
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