攪拌加熱工程に一工夫、味で戦う「世界初」のパスタ調理ロボットが稼働開始:サービスロボット(2/2 ページ)
調理/業務ロボットの設計製造などを手掛けるTechMagicは2022年6月27日、同月30日にオープンした「エビノスパゲッティ 丸ビル店」(東京都千代田区、丸の内ビルディング地下1階)で、「PRONTO」などを展開するプロントコーポレーションと共同開発したパスタ調理ロボット「P-Robo」が稼働開始したことを発表した。麺のゆで上げや調理、鍋の洗浄などを自動化して、店舗の省人化に貢献する。
食事のおいしさを追求
今回のP-Roboに用いられている注文用のアプリケーション、具材やソースを供給する装置などは、TechMagicのエンジニアが設計している。TechMagic 開発本部 副本部長の横内浩平氏は、「顧客のニーズに応じて、ハードウェアとソフトウェアを自社で両方提案できるのが当社の強みだ」と語った。
また横内氏は、P-Robo開発に当たり、特に食事のおいしさを追求するよう心掛けたと振り返る。TechMagicとプロントコーポレーションは、エビノスパゲッティの店舗コンセプトとして、「ロボットが調理する」というエンターテインメント要素だけではなく、しっかりとした味わいのある料理で来店客に訴求することを目指した。プロントコーポレーション 常務取締役の杉山和弘氏は、自動調理ロボットの料理を食べたある人の感想を取り上げて、「ロボットによる調理自体には感嘆していたが、『味は普通』ともコメントしていた。こうした(調理ロボットを用いた)業態は、目新しさだけではなく、おいしくなければ続かないのではないかと感じた」と語る。
そこでTechMagicは「一流のシェフの味」を再現するため、加熱工程の時間や攪拌の仕方を工夫した。「味だけでなく、料理提供時間も意識する必要がある。いかに短時間で目標の火力に到達させるかが大事になるが、一方で、火力を強めると焦げ付きやすくもなる。だが、低出力でゆっくりと加熱すると、ソースの風味が飛びやすくなる上、麺もどんどん伸びてしまう。良いバランスに落ち着くよう試行錯誤を繰り返した」(横内氏)。
必要な加熱時間はソースの種類によっても異なる。例えば、トマトソースやクリームソース粘度が高く、素早く混ぜるとなじみやすいが、さらさらとした和風系のソースは攪拌方法を工夫しなければ麺に味がしみこまない。こうした点も留意しつつ、開発を進めたという。
エビノスパゲッティの店舗従業員は、具材やソース、麺を装置内に入れる他、盛り付けなどの業務を担当する。盛り付け業務を人手で行う理由について、横内氏は「当社の工場向けソリューションなどを導入すれば、自動化自体はできる。ただ、料理の仕上がりにおいては見た目がとても重要だ。盛り付け作業は付加価値の高い業務だと判断し、従業員に任せる形とした」と説明した。
プロントコーポレーションは今後5年かけて、同様の業態で50店舗を出店する計画だという。TechMagic 代表取締役兼最高責任者の白木裕士氏は飲食業における調理ロボット活用の意義について「当社はプロントコーポレーションと協力し、一流のシェフの味を再現するところまで行えた。日本はWeb領域では他国に後れを取りがちだが、調理ロボットの領域ではモノづくり力や料理文化を生かして、世界トップを目指せるのではないか」と語った。
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