ダイヘンが樹脂と金属の異材接合技術開発、EV車体の軽量化に対応:金属加工技術
ダイヘンは、電気自動車の車体軽量化ニーズに対応する、樹脂と金属の異材接合技術を開発した。レーザーを用いる同技術は高強度の接合が可能で、従来の接合法で必要な乾燥工程や専用の部材が不要なため、コストや工程時間を削減できる。
ダイヘンは2022年6月7日、電気自動車(EV)の車体軽量化(マルチマテリアル化)ニーズに対応する、樹脂と金属の異材接合技術を開発したと発表した。
開発した異材接合技術は、熱源に生産ラインへの適応性が高いレーザーを使用する。金属表面にシングルモードファイバーレーザーを用いてπ形状の微細な溝パターンを形成し、金属の溝加工部と樹脂表面に、大気圧プラズマ処理で表面処理を施す。
その後、金属側からレーザーを照射し、レーザー照射位置の前後に設置されたローラーで加圧しながら接合する。前後のローラーは独立して作用するため、曲面形状にも対応できる。
この接合技術では、難接合樹脂の「PP」や工業的に広く利用される「PPS」(いずれもガラス繊維補強タイプ)と、輸送機器で幅広く利用される超ハイテン材「SPFC980鋼」を安定的に線接合できる。PPとSPFC980鋼、PPSとSPFC980鋼を接合し、引っ張りせん断試験を実施したところ、樹脂母材が破断し、強固な接合が確認できた。レーザーの照射条件と加圧条件を調整すれば、各種樹脂、金属の組み合わせで接合可能だ。
現在の樹脂と金属の接合方法には、さまざまな課題がある。接着剤、カップリング剤による接合法は、乾燥工程や廃液処理用の設備が必要で、廃棄コストがかかる。リベットで機械的に締結する方法は、前加工での工数増、リベット使用による重量、コストの増加が課題となる。また、射出成形による直接接合は部品ごとに専用の金型が必要で、形状や大きさに制約がある。
新開発の接合技術は高強度の接合が可能で、従来の方法で必要な工程や部材、金型などを必要としないため、コストや工程時間を削減できるほか、既存設備にも容易に導入できる。同社は今後、EVの車体軽量化に貢献すべく、自動車産業を中心に異材接合技術を提案し、2023年度の製品化を目指す。
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